映画「ユリゴコロ」はキャストが最高!吉高由里子さんがとてもきれいでした。沼田まほかるさんの原作が好きな方にもおすすめです。
映画「ユリゴコロ」の感想~原作のネタバレを含む
前日に観た映画がかなり原作とは違った内容でちょっとがっかりしていたところだったので、ついついその作品と比べてしまいましたが、『ユリゴコロ』はなかなか原作に近い印象でした。
なんといっても、美紗子役の吉高由里子さんを始め、亮介役の松坂桃李さん、洋介役の松山ケンイチさんらキャストが皆さんはまり役でとても良かったです。
御三方とも、普段バラエティ番組などで拝見するほんわかした雰囲気をまったく見せず、シリアスな演技がとても素敵でした。
ちょこちょこ出てくる松坂桃李さんが車を飛ばすシーンだけはちょっとくどかったけど。
吉高由里子さんと松山ケンイチさんの二人のストーリーは、ベタな表現ではありますが、せつなくも美しいという言葉がぴったりのシーンでした。
そんな偶然の再会があるかなんて、気にするのはもったいないです。
ちなみに、初めて原作を読んだときは、正直読みにくい文章だなぁという印象で(相性の問題だと思いますが)、読後すぐにメルカリに出品していました。
でも、なにかのきっかけで『ユリゴコロ』のことを思いだし、売れる前にもう一度読んでおこう、と思って再読。
飛ばし読みでしたが、どんどん引き込まれ、結局メルカリからは出品を取り下げ、手元においておくことに。
そして、今回映画を観てあらためて読んでみても、やっぱり売らなくて(売れなくて)良かった・・・と実感しました。
ストーリーに関しては、原作の中に出てくる言葉をお借りすると”正反対の感情が複雑に絡みあう”、”まともに答えることができない”と感じました。
共感できるわけでもないし、美化もできませんが、現実にも自己中心的な犯人による残虐な事件は起こるし”人間の心のそのものが、永遠に解き明かせないひとつの混乱”なのかなぁと。
ただ、リストカットを繰り返すみつ子の話が原作にも映画にもある話ですが、あれだけはどうしても嫌悪感と、しかも映画だと刃物で切るシーンを目の当たりにしてしまう痛そう怖そう、で私はない方が良かった。
原作ではもう少し登場人物が複雑で、吉高由里子さんが演じた役には妹、松坂桃李さんが演じた役には弟がいて、そのあたりの関係も面白いので、まだ読んだことがない人にはぜひおすすめです。
原作者の沼田まほかるさんは『九月が永遠に続けば』で第5回ホラーサスペンス大賞を受賞されている小説家です。2006年の著書『彼女がその名を知らない鳥たち』も蒼井優さん主演で映画化されています。
また『ユリゴコロ』は第14回大藪春彦賞受賞、本屋大賞ノミネート、「このミステリーがすごい!」国内部門第5位にランキングもされています。
大藪春彦賞ってどんな賞?
ところで沼田まほかるさんの原作『ユリゴコロ』は、第14回大藪春彦賞受賞作です。
そこで今回は大藪春彦賞について調べてみました。
大藪春彦賞は、小説家の大藪春彦さんの業績を記念し、優れた物語世界の精神を継承する新進気鋭の作家および作品に贈られる賞だそうです。
大藪春彦さんは、『野獣死すべし』、『蘇える金狼』、『汚れた英雄』など代表作は映画化、テレビドラマ化されていますが、盗作の疑いをかけられ日本探偵作家クラブを除名されたり、拳銃不法所持で逮捕されたこともあったようです。
【大藪春彦賞受賞作一覧】
第1回(1999年)『漂流街』馳星周
第2回(2000年)『亡国のイージス』福井晴敏
第3回(2001年)『スリー・アゲーツ 三つの瑪瑙』五條瑛
第4回(2002年)『邪魔』奥田英朗
第5回(2003年)『ハルビン・カフェ』打海文三
第6回(2004年)『ワイルド・ソウル』垣根涼介・『太平洋の薔薇』【上・下】笹本稜平
第7回(2005年)『犯人に告ぐ』雫井脩介
第8回(2006年)『遠くて浅い海』ヒキタクニオ
第9回(2007年)『蒼火』北重人・『TENGU』柴田哲孝
第10回(2008年)『サクリファイス』近藤史恵・『すじぼり』福澤徹三
第11回(2009年)『路傍』東山彰良
第12回(2010年)『約束の地』樋口明雄・『龍神の雨』道尾秀介
第13回(2011年)『ダイナー』平山夢明
第14回(2012年)『ユリゴコロ』沼田まほかる
第15回(2013年)『検事の本懐』柚月裕子
第16回(2014年)『リバーサイド・チルドレン』梓崎優・『ヤマの疾風』西村健
第17回(2015年)『鬼はもとより』青山文平・『コルトM1851残月』月村了衛
第18回(2016年)『革命前夜』須賀しのぶ
第19回(2017年)『リボルバー・リリー』長浦京
第20回(2018年)『白い衝動』呉勝浩・『Ank: a mirroring ape』佐藤究
第21回(2019年)『肉弾』河崎秋子・『凍てつく太陽』葉真中顕
昨年映画館で鑑賞した平山夢明さんの『ダイナー』も入ってる!
雫井脩介さんの『犯人に告ぐ』はちょうど一昨日買ったばかり。賞を獲っているからというわけではありませんが、読むのが楽しみです♪