貫井徳郎さんの小説『乱反射』が、妻夫木聡さん、井上真央さん主演で劇場公開されるそうです。2018年にテレビドラマとして放送されたものを劇場版ディレクターズカットとして上映されるみたいですね。
映画『乱反射』と『愚行録』
貫井徳郎の小説『乱反射』は、第63回日本推理作家協会賞を受賞し、第141回直木賞候補にもなった作品です。選考委員の北村薫さんが「『乱反射』に与えないようなら、推理作家協会賞の存在意義はない」。なぜなら『乱反射』は「小説という衣の下に、本格の鎧を隠した作品」だからとおっしゃたとか。俄然読みなくなります。作家さんの紹介した作品や推薦文なんかに弱いんですよねぇ、私。
『乱反射』は、”地方都市に住む幼児が、ある事故に巻き込まれる。原因の真相を追う新聞記者の父親が突き止めたのは、誰にでも心当たりのある、小さな罪の連鎖だった。決して法では裁けない「殺人」に、残された家族は沈黙するしかないのか?”、”どこにでもある小さな出来事、小さなエゴが集まって大きな事件になってしまう。”(アマゾンより抜粋)という、なんだか心苦しくなりそうな、そんなストーリーです。
私はまだ『乱反射』は読んでいないのですが、同じく妻夫木聡さん主演で映画化された、貫井徳郎さんの小説『愚行録』を読んだことがあったので、『乱反射』劇場公開のネットニュースを観て、久しぶりに『愚行録』を読んでみたくなりました。ストーリーもなんとなく『乱反射』と通ずるものがありそうですし。
その『愚行録』ですが、内容はなんとなく覚えていたのですが、初めて読んだときにどう感じたか、ということをあまり覚えていませんでした。すぐに手放していた(メルカリ)ので、あまり私好みではなかったのか、または読後感が悪いかだったのかなぁ。
といっても、小説って読むときの状況、年齢や精神状態、そのときの他人との関係によって感想は変わってくるので、今回あらためて図書館で借りて読んでみました。
文章としては読みやすいのですが、近所のおしゃべりのおばちゃんから始まり、終始、人の嫌なところを見なくてはいけない、とやっぱり読んでいてあまり気持ちのいいものではなかったです。まさに『愚行録』なんですよね。ワイドショーや週刊誌などの人の噂話大好き、という方や湊かなえさんの作品のような”嫌ミス”と言われる作品が好きな方には当然おすすめです。私はそういう嫌な世界は現実だけで充分かなと(笑)。
ただ創元推理文庫の大矢博子さんの解説「愚かなのは誰?」は、自分のことを省みることができ、読んでよかったです。もしこれから『愚行録』を読む方がいらっしゃったら、ぜひこの解説から読んでほしいなぁと思います。
”他人を評価し他人を語ることは、自分を評価し自分を語ることに他ならない”
”何かを語るとき、人はどうしても自分というフィルタを通してものを見てしまう”
”自分というバイアスのかかった評価しかできない”
”善悪ではなく、是非でもなく、ただ愚かなのだ”
(貫井徳郎,愚行録 (創元推理文庫) 2009年,p.299-304)
また、妻夫木聡さんや満島ひかりさんが出演されている映画は、原作と少し違うそうなので、映画の方を観てみたいです。
貫井徳郎さんの気になる他の作品
そして今回公開される『乱反射』の原作小説はこれから読む予定ですが、貫井徳郎さんのデビュー小説『慟哭』はたしか読んだことがあるはずなのに、内容が全然思い出せない。さらには本格ミステリの極限に挑んで話題を呼んだ衝撃の問題作だという『プリズム』に関しては読んだことがないので、これらも読みたいなと思います。
それなのになぜ今回『愚行録』を読むことになったのだろうか・・・。無意識というか、なんとなく読もうと思っただけなのですが、もしかした調子に乗ってペラペラおしゃべりになってない?っていう自分へのメッセージだったのかなぁ。というのは後付けで、貫井徳郎さんが原作の映画で妻夫木聡さんが主演って前にもなかったっけくらいに感じたのがきっかけだとは思います。
他に、貫井徳郎さんの作品には「症候群シリーズ」という『失踪症候群』『誘拐症候群』『殺人症候群』や、山本周五郎賞受賞の『後悔と真実の色』、直木賞候補の『新月譚』『私に似た人』や、ムロツヨシさん主演でドラマ化された『悪党たちは千里を走る』、未公開長編小説『死の抱擁 第一部』430枚の全掲載・瀬名秀明とのロング対談・貫井徳郎自身による全作品解説等の『貫井徳郎症候群』なんかが、面白そうだな~って思いました。