「真夜中のゆりかご」のあらすじ

愛する妻アナと生まれたばかりの幼い息子アレクサンダーと湖畔の家で幸せな毎日を送っていた敏腕刑事のアンドレアス。

ある日通報を受けて相棒のシモンと共に掛け付けた現場で、薬物依存の男トリスタンに暴力をふるわれるサネと、その場にいた赤ちゃんの目を覆うような育児放棄の状況を目の当たりにする。自分の子供と同じくらいの赤ちゃんのことが不憫で、綺麗にしてあげ毛布でくるみ、保護するべきだと上司や同僚に主張します。しかし母親のサネは薬物中毒ではなく、父親のトリスタンは赤ちゃんを自分の子供であると認知していないため、トリスタンの薬物中毒を施設に入れる理由にできず、うやむやになってしまう。

一方アンドレアスの家では、夫婦で育児をし愛に満ちてはいたが、アレクサンダーの夜泣きが毎晩のように続いていた。そんなときはアンドレアスが車を出して車中で眠らせたり、アナが乳母車で夜に散歩したり、お互いに協力しあっていた。

ある晩、ストリップバーから電話があり、相棒シモンが酔って暴れているから引き取りに来てくれと言われる。シモンは妻と別れて、息子とも会えずに独り暮らしており、息子の新しい父親は水泳コーチで、シモンは会うことに頭を抱え荒れた生活を送っていた。

シモンを迎えに行き、酒びたりのシモンの散らかった部屋をみて、これでは息子も呼べないぞと諭すが、息子は新しい父親に懐いている、とシモンは聞く耳を持たない。アンドレアスがシモンを迎えに行っている間、アナはアレクサンダーをベビーカーに乗せて、散歩に出かけてあやす。

そして、悲劇は突然起きる。ある晩、夜中に起き出したアナがアレクサンダーの様子を見に行き、アレクサンダーが息をしていない事にが気付きリビングで泣き叫び取り乱す。アンドレアスは無駄とわかっていながらアレクサンダーに心臓マッサージなど応急処置をしながら、救急車を呼ぶように言う。しかし、アレクサンダーは助からず、通報すると言うも、死んでしまった息子と引き離される事を嫌がるアナは、子供と引き離したら自殺すると言い出す。

アンドレアスはアナを落ち着かせるために薬を飲ませ無理矢理アナを寝かしつける。そしてアレクサンダーの遺体を車に乗せて家を出る。どうしたら良いか分からないアンドレアスは、シモンに電話をするが、シモンはお酒を飲んでいて留守電だった。我を失ったアンドレアスはトリスタンの家へ向かう。トリスタンの家に侵入すると、赤ちゃんはトイレの床に寝かされたまま、ろくに世話をされていない。そしてアンドレアスはトリスタンとサネが眠っているのを確認すると、アレクサンダーの遺体とすり替えます。

翌日、目を覚ましたアナはリビングで赤ちゃんをあやすアンドレアスを見つける。アンドレアスは全てを話しこの子を育てようと言う。アナは遺体を置いてきたことを責め塞ぎこむが、それでも亡くなってしまった子供を思いつつも、そばに赤ちゃんがいると世話をせずにはいられない。

そんな折、留守電の様子から心配したシモンがアンドレアスの家を訪ねてくる。アンドレアスは何もなかったようにふる舞い、アナの調子が悪いと言い訳して、シモンを帰らせる。自分のせいにされたアナは不機嫌になり、アンドレアスにおかしいのはあなただと言う。それでも現状を飲み込もうとするアナだったが、とうとうある夜、赤ちゃんを連れ出し大きな橋のたもとでトラックを止める。

アナは、赤ちゃんが凍えて肺炎になってしまうからトラックに乗せてと頼む。ヒッチハイカーだと思ったトラックの運転手は、彼女から赤ちゃんを受け取り先にトラックに乗せようとする。そのときアナは突然橋の上から川に飛び込む。シモンは、アナを失ったアンドレアスを心配して会いに行くが、アレクサンダーの目が変わったことに気づく。するとアンドレアスは、帰ってくれと頼んで、赤ちゃんを見せないようにした。

一方、アレクサンダーの遺体を置き去りにされたトリスタンは赤ん坊が死んでいる事に気付き、逮捕されてしまうと動揺し、遺体が自分の子供ではないことを主張するサネの言うことをきかず、鞄に遺体を詰め、森に埋め、誘拐されたと見せかける。

全てを知るアンドレアスは、サネが吐いたとトリスタンに伝え、誘拐は狂言でトイレの床で死んでいたんだろと話す。シモンは、なぜそんなに詳しいのかと相棒の様子がおかしいと思い始める。

トリスタンはヘロインや銃が出てきたことから、更に勾留されることになり、アンドレアスはトリスタンに再度尋問する。そしてトリスタンの自供により、森が捜索され、赤ちゃんの遺体が見つかる。

アンドレアスが検死結果を聞きに行くと、突然死ではなく、ゆりかごの揺らしすぎによる脳の出血が原因だった。育児ノイローゼだったアナがゆりかごを揺らしすぎたことで助骨も骨折しており、明らかな乳幼児揺さぶり症候群、つまり虐待だったのだ。また、シモンが撮っていた写真から、シモンはアレクサンダーの顔が違うことに気づく。事の次第が明らかになり、アンドレアスは赤ちゃんをサネの元に返して謝り、警察を辞める。

数年後、ホームセンターで働き出したアンドレアスは、サネの姿を見かけます。近くに止めてあったカートには小さな男の子が立っていてアンドレアスに声をかけてくる。

ジェイミー・ラニスター役の俳優が主演の北欧のサスペンス映画

2014年制作のデンマーク映画です。監督、脚本は「未来を生きる君たちへ」で第83回アカデミー賞外国語映画賞を受賞したスサンネ・ビア、アナス・トマス・イェンセンのコンビです。我が子をなくし苦悩する刑事アンドレアス役はテレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」でジェイミー・ラニスターを演じるデンマークの俳優ニコライ・コスター=ワルドーです。

他にシモン役にはデンマークの俳優ウルリク・トムセン、育児に悩むアナ役にはスウェーデン女優マリア・ボネヴィー、薬物依存の男トリスタンはデンマーク俳優ニコライ・リー・コス、子供をすり替えられる母親サネ役はリッケ・マイ・アナスンです。

心苦しくもラストのシーンで救われる映画

サスペンスが観たいなと探していたら「ゲーム・オブ・スローンズ」のジェイミーが主演になっていたので、何の前情報もなく観ました。北欧の映画はおそらく初めてだと思いますが、サスペンスということもあり終始暗い雰囲気で、北欧の景色は綺麗なんだけど、全体的に重苦しい感じでした。

この映画は子育ての経験があるかないかで感じ方も違うのだろうと思いますが、子育て経験のない私でも、自分の子供が死んで、よその子とすり替えるなんて思うの?万が一思ったとして実行する?と話の強引さが嫌でした。そもそも通報したら自殺すると言う妻の気持ちを思いやるまではわかるけど、だからといって本当に通報しないなんて、そんなことありえる?と刑事とは思えないあまりにも衝動的な行動にイライラしました。子育て経験のある人なら共感するところはあるのでしょうか。

男の暴力が原因で子育て放棄をするサネも、「子供のことを大切に思っている」「子供が大事」と言い、病棟に入れられ、子供の名を叫びながら暴れ子供は死んでないと訴えたり、ストーリーが進むに連れ、いい母親のように描かれているような感じがしたけれど、男のもとから離れる気はなかったっぽくて、そういったところもイライラ感満載でした。ある種、洗脳状態だったのかもしれないけれど、そこまでのようには描かれておらず、人間は完璧じゃない、というのはわかるけれど、自分勝手にもほどがある、と思わずにいられませんでした。

簡単にいうと身勝手な二人の母親とだめ夫の二組のもとに生まれた不幸な二人の男の子の話で、サスペンスというより人間ドラマ的な要素が強く、終始憂鬱な内容ではあったけど、最後の終わり方が綺麗にまとまっていたので良かったです。私自身は子育でとは無縁なので考えさせられるというほど、身近には感じられませんでした。