家族の余命がわずかなとき、どうするべきかを考えさせられる、ある家族の物語。泣けるけど、観終わったあと前向きになれる映画です。
映画「私の中のあなた」のあらすじ
サラとブライアンの夫婦には、病気のケイトと、ジェシー、アナの3人の子供がいた。元は弁護士だった母親のサラは仕事を辞め、ケイトの看病に日々奮闘していた。
長女ケイトは2歳の時に白血病であることが判明し、骨髄移植をしようにも、両親や兄の白血球の血液型であるHLA型はケイトと適合しなかった。
ケイトを救いたいサラは、医師から法的に問題があるが、遺伝子操作をし、ドナーに適合する新たな子供を体外受精で作る方法があるということを聞き、ケイトの命を救うためにドナーになれる試験管ベイビー、アナを生んだのだった。
ケイトとアナ、ジェシーは仲の良い兄妹だったが、あるときアナが、ケイトのドナーになることを拒否し、両親を訴えるために弁護士キャンベル・アレクザンダーに弁護を依頼した。
少女の話を最初は相手にしなかったキャンベルだったが、アナが産まれた事情や、姉のために骨髄穿刺を繰り返していることなどを知り、アナの弁護を引き受ける。
アナに告訴されたことを知ったサラは、アナを責めるが、父親ブライアンはアナの気持ちも考える。
サラはキャンベルの事務所に乗り込み抗議するが、アレクサンダーはアナが受けた医療行為を本人は本当に理解していたのか、と言い返す。
一方、すでに死を覚悟していたケイトは、自分の病気のせいで、親がジェシーの失読症に気づかなかったことや、アナに痛い思いをさせてしまっていることなどに心を痛めていた。
サラは弁護士として復帰し、裁判所でキャンベルと判事と協議する。サルヴォ判事は、サラとは顔見知りであったが、まずはアナ本人の話を聞くことにする。
サルヴォ判事は娘のディーナを事故で亡くしていて、それを知っていたアナから死について質問され、アナの気持ちを知るためにも、サラの訴えの取り下げ要請を認めなかった。
その頃ケイトの容態は悪くなる一方で、ケイトは死を受け入れていたのだが、サラは受け入れられず、在宅医療を案内する人に当たってしまっていた。
そんな母親の様子も見ながら、ケイトは病院のベットの上で昔のことを思い出していた。以前ケイトは病院で治療中に、同じ白血病患者のテイラーと出会い恋におちた。二人は恋人となり、お互いに支え合う姿をみて、サラたちも温かく見守っていた。
ケイトはドレスを着てテイラーとダンスパーティーに参加し、素敵な思い出を作るが、ほどなくテイラーは病状が悪化し、死んでしまうという悲しい経験をしていた。
サラは相変わらず移植手術をするために訴訟の準備を続けていた。そんなサラに一緒に暮らしていたサラの妹ケリーは、ケイトの命を救うことに必死すぎて、大事なことが何も見えていないのでは、とアドバイスするがサラは受け入れない。
そんな中、ケイトがビーチに行きたいと言い出し、父親ブライアンが医師に1日だけなら、と許可をとり、ビーチへ行く準備をする。命が危ない、とビーチに行くことを反対するサラはヒステリックになるが、ブライアンは車にケイトとジェシー、アナを乗せ、ビーチに行くことを強行する。その後、ビーチにはケリーと一緒に、落ち着いたサラがやってきて、家族で楽しいひとときを過ごす。
その後もサラは裁判を続けた。サラは証言台でアナが受けた医療行為を説明しながら、自分が最低であることはわかっていて、それでも家族を守るためなのだと訴える。
次に証言台に立ったアナがサラから尋問されていたとき、裁判を傍聴していたジェシーが傍聴席から口を出す。
実はアナが両親を訴えた理由は、死を受け入れていたケイトがアナに頼んで裁判を起こすよう言ったからだったのだ。そしてケイトの苦しみを知っていたアナとジェシーは、ケイトの思いを尊重するために協力していたのだった。
すべてが明らかになり、サラはケイトの思いに涙する。その後ケイトは静かに息を引き取る。
ケイトの死後、キャンベル弁護士がアナを訪ねてくる。アナは裁判に勝訴したのだった。
その後、家族はそれぞれ新たな道を歩み始めるが、毎年ケイトの誕生日には必ず集まった。
原作はアメリカのベストセラー小説
映画「私の中のあなた」は、アメリカの作家ジョディ・ピコーの小説「私の中のあなた」(My Sister’s Keeper)が原作の映画です。公開は2009年で、同年にティーン・チョイス・アワードを受賞しています。ティーン・チョイス・アワードとは、アメリカ、フォックス放送主催の、映画・テレビドラマ・音楽・スポーツなど各分野で最も活躍したセレブリティや作品を選ぶ賞です。
監督は映画「きみに読む物語」のニック・カサヴェテス監督です。ニック・カサヴェテス監督は父親が、映画俳優・監督のジョン・カサヴェテス、母親が女優のジーナ・ローランズで、幼い頃は父親の作品に子役として出演していたそうです。
主人公のアナ・フィッツジェラルド役はアビゲイル・ブレスリンです。アビゲイル・ブレスリンは、2006年公開の映画「リトル・ミス・サンシャイン」で放送映画批評家協会賞若手女優賞、東京国際映画祭女優賞を受賞し、アカデミー賞にも、史上4番目の若さで助演女優賞にノミネートされています。
ケイト・フィッツジェラル役はソフィア・ヴァジリーヴァです。2005年放送開始のテレビドラマ「ミディアム 霊能者アリソン・デュボア」で長女アリエル・デュボアを演じ、ヤング・アーティスト・アワードを受賞しています。
ちなみに当初、アナ役とケイト役には、エル・ファニング、ダコタ・ファニング姉妹でしたが、降板したため、アビゲイル・ブレスリンとソフィア・ヴァジリーヴァの二人になったそうです。
アナとケイト、ジェシーの母親サラ・フィッツジェラルド役はキャメロン・ディアスです。キャメロン・ディアスは1994年公開の映画「マスク」で映画デビュー、1998年公開の映画「メリーに首ったけ」でブレイクしたアメリカの女優です。その後も「チャーリーズ・エンジェル」や「バニラ・スカイ」「ホリディ」などたくさんの映画に出演していますが、2014年のミュージカル映画「ANNIE アニー」を最後に、2018年女優を引退したそうです。
他、兄のジェシー役はアメリカの俳優エヴァン・エリンソン、父親のブライアン役はアメリカの俳優ジェイソン・パトリック、弁護士のキャンベル・アレクサンダー役はアメリカの俳優アレック・ボールドウィン、デ・サルヴォ判事役はアメリカの女優ジョーン・キューザック、ケイトの恋人テイラー役はアメリカの俳優、ミュージシャンのトーマス・デッカーです。
原作も気になる作品
この映画は、何かの映画紹介の記事で知って観てみようと思った作品で、原作を知らずに鑑賞しました。一度目に観た際には、時系列がわかりにくかったのですが、映画を観た後、他の方の映画のレビューや紹介記事などから、そういう流れだったのかぁ、と理解し、さらに結末が原作を違う、ということを知って原作も読んでみようと思いました。なんと原作では、生き残るのはケイトの方なのだそう。
さらに兄のジェシーも、非行少年で、映画でもわずかにそんな感じを出していましたが、原作では家出して麻薬や放火などに手を染めるような子だったそうです。確かにあんな両親のもとではグレてしまうのもわかる気がします。
反対に映画では、アナもジェシーもとても優しく、特に、姉ケイトのために母親と対立しても気丈に振る舞う姿は、観ていてとてもせつなかったです。そしてそんなアナの姿に我慢できず、真相をバラしてしまうジェシーに、本当に心の優しい兄妹だな、と思いました。
時系列を理解し、二度目に映画を観たときは、一度目よりもストーリーに入りこめて、自分なりに家族の絆やデザイナーベイビーのことなどを考えることができました。
ケイトの治療のために手段を選ばない母親の思いは、子供にいる人にしかわからない複雑な気持ちだとは思いますが、子供を助けるための子供を生む、ということは、やはり受け入れ難いことだなと私は思います。遺伝子操作をして親が望む子供を作る、ということは、どんな場合でも、それを許してしまうと、そのうち歯止めが効かなくなり、想像以上の何か恐ろしいことが起こりそうで怖いです。
でも一方で、親にとっては、子供が死んでしまうのも諦めるよりほかない、と簡単に受け入れることができるわけじゃない気持ちもわかるし、できることがあるなら何でもする、という気持ちも理解できるので、本当に難しい問題だと思います。親の気持ちもあるし、子供の気持ちもあるし、一番大切なのはこの映画では、ケイトの気持ちで、ケイトの思いを理解し、結末を受け入れることができたけど、現実にはもっと幼い子が当事者の場合もあるし・・・。難しいですね。
この映画は、強い絆で結ばれた兄妹、親から子への無限の愛が描かれた物語で、家族の気持ちを理解しあうことの大切さや、それぞれの倫理感についても知る機会にもなるので、ご家族や大切な方と観ることをおすすめします。