映画「二ツ星の料理人」のあらすじ
腕は確かな天才肌の料理人アダムは、パリのレストランで腕を振るっていた頃、ドラッグと酒、女に溺れるなどトラブルを起こしてばかりいた。
店も仲間も失ったアダムは、ルイジアナへ行き、自らに課した牡蠣の殻剥き100万個をやり遂げ、世界一のレストランを作るという夢を胸に抱きロンドンへやってきた。
アダムはロンドンでレストランの経営を学ぶトニーを訪ね、彼の父親が経営するホテルのレストランを自分に任せてほしいと頼む。
悪名高いアダムを知るトニーは、首を縦に振ろうとしなかったが、アダムが料理評論家のシモーネを満足させたことにより、カウンセリングを定期的に受けるという条件で、アダムにレストランを任せることにする。
そしてアダムは、ミシュランの三ツ星を獲得すると宣言し、一緒に働くシェフ探しを開始する。
かつてパリで潰した店の同僚ミシェル、刑務所から出所したばかりのマックス、アダムを尊敬する若者デヴィッド、他の店から強引に呼び寄せた一人娘をもつシングル・マザーのエレーヌなど自分が見込んだ料理人を集め、レストランはオープンした。
しかし、オープン当初は、スタッフをうまく回すことができず、アダムは苛立つことがあった。新たな気持ちでスタートしたアダムのもとに、パリで麻薬売買にからんでいた時代に作った借金を取り立てに二人組の男が現れるようにもなる。
そんな時、パリ時代に共に働き、現在はロンドンで成功しているライバルのシェフ、リースがレストランの開店パーティーにアダムを招待した。アダムはエレーヌに恋人役を頼み、二人で出かけた。
そこには、アダムの師匠であるジャンリュックの娘アンヌ・マリーがいた。アダムの恋人だった彼女も薬物中毒だったが、今は立ち直っていて、アダムが3年前に行方をくらませたことや、アダムが父親の葬儀に出なかったことも許しているという。
アダムは自分の人生を振り返り、エレーヌに自分の後悔について話し、そして2人はキスを交わす。しかしアダムの元に再び麻薬の売人が現れ、アダムに暴行を加える。
アダムは怪我を負い、傷だらけの姿でレストランに出勤する。トニーやエレーヌは心配するが、そのときミシュランの調査員がやって来たらしい、と厨房へ連絡が入る。
厨房は緊張感が漂うなか、アダムたちは一丸となり調理に取りかかるが、調査員に出した料理は途中で厨房に突き返される。
その料理のソースにはなぜか、大量の唐辛子が入っていた。それはミシェルが、パリで独立してレストランを開業した後、アダムのせいで閉店に追い込まれた恨みを果たすため、わざとやったことだった。
ミシェルは、レストランを去り、三ツ星の夢が消え絶望したアダムは、街をさまよいリースのレストランを訪れる。
自暴自棄になったアダムは、大騒ぎして死のうとするが、リースに助けられ、その場で眠りにつく。翌朝、リースはアダムのためにオムレツを作り、アダムのことを認めていることを告げ、2人の確執も消えた。
アダムがレストランに戻ると、アダムの借金を肩代わりしたアンヌ・マリーと出くわす。彼女は、父親の形見のナイフをアダムに手渡し、エレーヌとのことを祝福して立ち去る。
さらにトニーとエレーヌがアダムの部屋を訪ねてきて、レストランに来ていたのはミシュランの調査員ではなかった、という。その客はただのビジネスマンだった。
その朗報に喜んだアダムは、かつての態度をあらため、他のシェフ達といい関係で調理に取り組んでいた。そのころ、レストランにはまたミシュランの調査員らしき二人組の客がやってきたが、アダムは普段通りいこう、と指示する。トニーは緊張しつつもそんなアダムを見守る。
休憩時間、仲間たちと談笑しながら食事をするアダムの姿があった。
ブラッドリー・クーパーが再起を図るシェフを熱演
「二ツ星の料理人」(原題: Burnt)は、2015年公開(日本では2016年に公開)のアメリカの映画です。監督はアメリカ出身で「8月の家族たち」も有名なジョン・ウェルズ、脚本はイギリスの映画監督、脚本家、小説家のスティーヴン・ナイトです。
主役のアダム・ジョーンズ役はこのブログで何度も紹介済みですが、アメリカの俳優ブラッドリー・クーパーです。「世界にひとつのプレイブック」や「アメリカン・ハッスル」では製作総指揮、「アメリカン・スナイパー」では製作を務め、プロデューサーとしてもアカデミー作品賞にノミネートされ、2018年には「アリー/スター誕生」で主演兼初監督を務めています。
シングル・マザーのエレーヌ役はアメリカ出身のモデル、女優のシエナ・ミラーです。「フォックスキャッチャー」や「アメリカン・スナイパー」」など、映画出演も多いですが、2009年公開の「G.I.ジョー」ではバロネス役を演じ、ゴールデンラズベリー賞最低助演女優賞を受賞しています。
アダムの旧友トニー役はスペイン生まれでドイツの俳優ダニエル・ブリュールです。映画「コロニア」のレビューでも紹介済みですが、「グッバイ、レーニン!」「ラッシュ/プライドと友情」や「ボーン・アルティメイタム」「黄金のアデーレ 名画の帰還」などに出演しています。
アダムのライバル、リース役は、イギリスの俳優マシュー・リースです。マシュー・リースはドラマ「ブラザーズ&シスターズ」のケヴィン・ウォーカー役、「ジ・アメリカンズ」のフィリップ・ジェニングス役で有名です。2017年のアメリカの映画「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」では、元アメリカ合衆国軍事アナリスト、ダニエル・エルズバーグ役も演じています。
アダムに復讐をするミシェル役は、2011年の映画「最強のふたり」で主演のドリスを演じ、東京国際映画祭最優秀男優賞、セザール賞主演男優賞などを受賞したフランスの俳優オマール・シーです。
他、マックス役はイタリアの俳優リッカルド・スカマルチョ、デヴィッド役はアイルランド出身の俳優サム・キーリーです。
三ツ星獲得を目指し奮闘するシェフの物語?
この映画もブラッドリー・クーパーが出演している、だけでなく、私はフードアナリストということもあり、どんな料理が出てくるのかな、ということにも興味があったので観ました。
調理のシーンが多いわけではありませんが、飲食関係の仕事経験から、アダムのような厨房で厳しい料理人って本当にいるので、リアルに緊張が感じられました。ミシュランの三ツ星獲得が目標のアダムの料理は、確かにきれいに盛り付けられとても美味しそうではありますが、庶民の感覚では、ラストのシーンでみんなでまかないを食べている方が、ほのぼのとしていて、のんびり美味しくいただけそうです。
それにしても、アダムの過去は薬物中毒や借金など、いろいろな問題を抱えていても、それでも助けてくれる友人や元カノ、ライバルシェフなどに恵まれ、ラッキーな人です。それはもちろんそれだけの魅力がアダムにあるからですが、現実には借金を肩代わりしてくれる元カノなんて・・・いないでしょうね。
観る動機が不純なため(イケメンが見たいだけ)、ストーリーは期待していなかったのですが、ライバルシェフに救われるところや、昔の同僚に思わぬところで復讐されるところなど意外と面白かったです。パリ時代の師匠との関係や周囲とのトラブルなどは想像するしかないのですが、形見のナイフを渡されるくらいなので、その辺のことも少しストーリーに入っていたらより深い物語になっていたかな、とも思いました。
映画らしく、上手くまとまったハッピーエンドで、見終わったあと、何か感じることや考えさせられることは正直なかったです。それでも本当に大切なものはなにか、人それぞれだとは思いますが、自分の価値観を探るためにも、とくに料理人を目指す人は観ておいて損はないかな、と思います。