ジャズや音楽が好きな人はもちろん、ジャズを知らない人でも楽しめるスポ根ものに近い映画です。

映画「セッション」のあらすじ

アンドリュー・ニーマンはアメリカ最高峰の音楽学校、シェイファー音楽学校でドラムを学んでいた。

ある日ニーマンが一人で練習をしているところへ楽団員を探しているフレッチャーが現れるが、ニーマンの練習を少しみて、そのまま部屋から出ていった。

ニーマンが学ぶ初等クラスのバンドで、ニーマンは控えとして主席奏者の隣に座り、楽譜をめくる担当だった。

ある日、初等クラスのバンドが練習をしている教室へ突然フレッチャーがやってくる。フレッチャーは、各楽器に演奏をさせ、その中からニーマンだけに明日朝6時にスタジオに来い、と言った。

スカウトされたことで有頂天になったニーマンは、よく行く映画館で働いているニコルをデートに誘ってOKをもらう。

ところが翌日、寝坊をしていしまい、急いでスタジオに行くが誰もおらず、入り口にスタジオ・バンドの練習は9時からと書かれていた。

ニーマンが待っていると9時近くになって、スタジオ・バンドのメンバーが続々とやってきて、フレッチャーがスタジオに入ると、スタジオは異様な緊張感に包まれる。

そして練習が始まると、フレッチャーに怒声を浴びせられ、退場させられるバンドメンバーをみて、ニーマンは驚く。

休憩時間、フレッチャーはニーマンに対して、優しく受け入れるような態度だったので安心するニーマンだったが、練習が再開されたとたん豹変する。

テンポがずれていると、ニーマンはフレッチャーから椅子を投げつけられ、さらに頬を叩かれる。そのあまりの厳しさに、ニーマンは泣きながらうつむく。

しかしフレッチャーを見返そうと奮起したニーマンは、手にマメができ血だらけになっても必死で練習に打ち込んだ。この頃は練習の合間にニコルとデートもしていた。

あるとき、バンドにとって大事なコンテストで、ニーマンはドラムの主席奏者のタナーの楽譜をなくしてしまう。タナーは病気が原因で楽譜を暗譜できないため、楽譜がないと演奏ができなかった。そこでニーマンは自分は暗譜しているとアピールし、ニーマンの演奏で見事バンドは優勝した。

その後ニーマンは、バンドの主席奏者なり、そのことを誇りに思っていたが、同じ年頃の親戚たちや、その親、ニーマンの父親ジムまでもニーマンのドラムへの情熱を軽視していた。そのためニーマンは病的なまでにドラムへ執着し始める。

ところがフレッチャーが、新しいドラマーとして、ライアン・コノリーをバンドに連れてくる。ニーマンはライアンが自分よりうまいとは思えなかったが、フレッチャーがライアンのことを褒めるので、一層練習に打ち込んでいき、時間が無駄になるという理由でニコルにも別れを告げる。

ある日、フレッチャーがバンドメンバーの前で、昔の生徒でフレッチャーが見出したというショーン・ケイシーが自動車事故で亡くなったと話す。

そして静かな空気のなか、練習が始まるが、フレッチャーのドラマーに対する指導が徐々に激しくなっていった。ドラマー3名以外のバンドメンバーを休憩にし、3人に順番にドラムを演奏させる。

フレッチャーは、自分を納得させることができる演奏が聴けるまで極端に早いテンポでの演奏を続けさせる。その指導は数時間にも及び、ドラムセットは3人の手から流れる血で血まみれになっていた。

最終的にニーマンだけが、この練習に耐え、フレッチャーはニーマンを主席奏者にする。

コンペティション当日。会場へ向かっていると、乗っていたバスが故障してしまう。時間がないためニーマンはレンタカーを借りて急いで会場に向かう。

なんとか会場に到着したニーマンだったが、ドラムスティックをレンタカーショップに忘れたことに気づき、ステージには間に合う、といって飛び出す。

ドラムスティックを回収し急いで車で会場へ戻る途中に、トラックとの事故を起こしてしまう。車は横転しニーマンは血まみれだったが、執念でステージにたどり着き、血まみれのまま演奏を始める。

しかし、右手はほとんど使えず、満足な演奏は出来ず、ついにはスティックを落としてしまう。フレッチャーに演奏を止められ「終わりだ」と言われたニーマンはフレッチャーに殴りかかり、ステージから退場させられる。

この騒ぎでニーマンはシェイファー音楽学校を退学になってしまった。

ニーマンと父親ジムは、事故で死んだショーン・ケイシーの代理人を務める弁護士からケイシーは事故で死んだのではないと聞かされる。実はケイシーはフレッチャーの指導を受けるようになってから、うつ病を患い自殺したのだった。

弁護士は、直接訴えることはできないが、二度と彼の体罰にあう生徒が現れないようにフレッチャーを辞めさせる事はできる、とニーマンに協力を持ちかける。

ニーマンはフレッチャーの資質は認めていたため、初めは協力を拒んだが、ドラムへの情熱が消えていくと、分からないようにするとも言われたことから応じることにした。そしてニーマンの密告で、フレッチャーは音楽学校での指導を辞めさせられた。

数か月後、ドラッグストアの店員として働きはじめたニーマンは、偶然フレッチャーがピアノの演奏をしているジャズクラブを見つける。フレッチャーは客席にいたニーマンを見つけ声をかけ、二人は酒を飲みながら話をする。

フレッチャーは自分が学生に厳しくするのは、偉大なミュージシャンを育てるためだったと話す。そしてフレッチャーが指揮をする次のJVC音楽祭でのバンドのドラマーに誘う。これまで見たことのないフレッチャーの誠実な話しぶりに感動し、ニーマンはドラムを受けることにした。

そして、スカウトマン達が集まる音楽祭当日。フレッチャーは、ニーマンにだけ嘘の演目を教えていて、舞台で全く別の曲の演奏を始める。

実はフレッチャーは、自分がシェイファー音楽学校から追いやられたのは、ニーマンによる証言だったことを知っていて、演奏を失敗させる事でニーマンに復讐しようとしたのだった。

フレッチャーの企みに呆然とするニーマンの姿に、フレッチャーはほくそ笑む。そしてフレッチャーは次の曲を紹介しようとするが、突然ニーマンのアドリブの演奏によりさえぎられる。

ニーマンの圧巻のドラム独奏に、バンドメンバーは雰囲気に飲まれニーマンに合わせた演奏を始め、ためらいながらも指揮をするフレッチャーだったが、やがてその表情には歓びの表情が浮かぶのだった。

J・K・シモンズがアカデミー賞・助演男優賞を受賞

「セッション」は、2014年のアメリカの映画です。監督・脚本は「ラ・ラ・ランド」のデミアン・チャゼルです。第87回アカデミー賞で5部門にノミネートされ、助演男優賞、編集賞、録音賞の3部門を受賞しています。

主役のニーマンはアメリカの俳優マイルズ・テラーです。この映画でゴッサム・インディペンデント映画賞の主演男優賞、 英国映画テレビ芸術アカデミー賞の新人賞、MTVムービー・アワードの主演男優賞
、サテライト賞の主演男優賞にノミネートされています。

テレンス・フレッチャーは「スパイダーマン」シリーズのジェイムソン新聞編集長役で知られているアメリカの俳優J・K・シモンズです。人気ドラマ「LAW & ORDER」のエミール・スコダ博士役ほか、たくさんのドラマや映画に出演しているJ・K・シモンズですが、この映画でアカデミー賞・助演男優賞をはじめ、ニューヨーク映画批評家協会賞・助演男優賞、トロント映画批評家協会賞・助演男優賞、ゴールデングローブ賞・助演男優賞、放送映画批評家協会賞・助演男優賞、インディペンデント・スピリット賞・助演男優賞、全米批評家協会賞・助演男優賞、英国アカデミー賞・助演男優賞、サテライト賞・助演男優賞を受賞しています。

ニコル役は、ドラマ「SUPERGIRL/スーパーガール」で主演のスーパーガールを演じたアメリカの女優メリッサ・ブノワです。

指導かパワハラかを考えてしまうと楽しめないストーリー

この映画の原題は「Whiplash」なのですが、ジャズの曲名でもある「Whiplash(ウィップラッシュ)」には、「ムチ打ち」という意味があるそうです。映画の内容そのままです。なぜ邦題が「セッション」なのか。セッションのほうがわかりやすいということなら残念です。「セッション」という言葉から受ける感じは、私にはわかりませんでした。映画を深く観ることができる人にわかるのかもしれません。

クライマックスでこれまでのわだかまりを打ち破り、セッションへとつながる点で、最終的にってことかもしれませんが、それまでの狂気の沙汰が強すぎて、もはやブラックジョークの部類なのでは、とすら思いました。パワハラなのか、指導なのか・・・受け止め方によって評価は分かれるだろうな、と思います。食らいついていく主人公のニーマン目線で見ると指導なんでしょうが。

ラストシーンは鳥肌ものだそうで、音楽を愛する人や、音楽家の方からしたら、感動する物語なのかもしれませんが、特に音楽に興味はなく、しかもジャズがちょっと苦手な私からしたら、ただただサスペンスもしくはホラーでした。アカデミー賞助演男優賞を受賞しているJ・K・シモンズの狂った演技はさすがでしたが、昔の厳しかった部活動をちょと思い出したりして、イヤ~な気分にもなりました(笑)

他の方のレビューではいろいろ深いことが書かれていたり、評価も高いようですが、確かにインパクトが強いので、どこかで流れていたら目を奪われる可能性はありそうです。純粋に音楽が好きな人や何かでトップを目指している、というような人にはおすすめです。