「仮面の男」のあらすじ
かつてルイ13世の王に仕え、名高い評判をとどろかせたアラミス、アトス、ポルトスの三人の銃士は現役を退いて、それぞれの暮らしをしていた。そしてもう一人、彼らと深交のあったダルタニアンは王に忠誠を誓い銃士隊長としてルイ14世に仕えていた。
若い国王ルイ14世は、貧困に苦しむ国民を顧みることなく贅沢をし、女性に対しても一晩の使い捨てとしか思っていないような横暴な王で、とても人々から忠誠の対象となる王ではなかった。そんな若い王のことをダルタニアンは三人に相談しますが、ルイ14世の暴君ぶりに呆れてはいるが、ダルタニアンに王に仕えることをやめろと言うにとどまっていた。
ところが、アトスの息子ラウルの恋人クリスティーヌに惹かれたルイが、彼女を手に入れるため、ラウルを戦争の最前線に異動させる。そんな自分勝手な王に憤慨するアトスだったが、ダルタニアンの説得でいったんは怒りを納めるも、その後ラウル戦死の知らせを受け取り、王とダルタニアンへ激しい怒りをぶつける。
一方、王はアラミスを呼び出し、戦争に抗議するイエズス会の指導者を探し出して暗殺することを命じる。ところが実はイエズス会の指導者とはアラミス自身だった。このような事態を重く見たアラミスは、アトス、ボルトス、ダルタニアンを呼び出し「ルイを国王の座から引きずり落とすための計画に協力して欲しい」と話す。息子を王のせいで失ったアトスはもちろん、ポルトスも協力を快諾するが、ダルタニアンは王への忠誠の誓いは破ることはできない、と協力を断る。
三人は謎の「鉄仮面の男」がいるバスティーユ牢獄に向かい、鉄仮面を装着させられている男を助け出す。仮面をはずすと、その男は国王とそっくりな容姿をしており、アラミスは男の正体について話す。その男の正体はなんとルイの双子の弟、フィリップでルイの命令を受けたアラミスによって鉄仮面を装着させられ、バスティーユ牢獄に幽閉の身となっていた。
そしてアラミスはルイとフィリップをすり替える計画を説明する。フィリップは自分がなぜ仮面をつけられ囚われていたのかも知らず、突然のことに戸惑うが、アトスの「息子が死んだことが無意味ではなかったことの証明をしたい」という告白を聞き、国王になることを決意する。三銃士はすり替えのため、フィリップに立ち居振る舞いやテーブルマナー、官僚の名などを徹底教育。ルイが主催する仮面舞踏会に紛れ込み、三銃士はフィリップを国王の服に着替えさせ、すり替えに成功する。ところが舞踏会中、今までのルイからは考えられない行動に、ダルタニアンは違和感を感じはじめる。
一方、戦死する直前にラウルが送った手紙を受け取ったクリスティーヌは、貧困と病気に苦しむ家族を救うためとはいえ、ルイの愛人になった自分を責め、ラウルが戦死するようにルイが仕向けたことを、ルイとすり替わって王となっていたフィリップに非難の言葉を投げつける。フィリップはクリスティーヌに償うことを約束するが、その人の気持ちを配慮する態度にますます不信を抱いたダルタニアンは、銃士隊に宮殿内を警戒するように命令する。
ルイを連れてアラミス、アトス、ポルトスは地下水道から逃げようとしたとするが、銃士隊に見つかってしまい、フィリップが捕まってしまう。ルイはフィリップに再び鉄仮面を装着させてバスティーユ牢獄に幽閉し、ダルタニアンに三銃士を殺すように命令する。同じ頃、絶望したクリスティーヌはルイの部屋の真上から首を吊り自殺する。ルイのふるまいに憤りを隠せなくなってきたダルタニアンはクリスティーヌの遺体をルイに見せ動揺させるもルイは早く遺体をどけろと怒鳴るだけだった。
逃げ帰った、三銃士はダルタニアンが残した手紙を見つける。手紙にはフィリップの居場所が書かれており、罠であったとしても行くしかない、と死装束にとおいてあった銃士時代の軍服をまといバスティーユ牢獄に向かう。一方、ダルタニアンはルイとフィリップの母親でダルタニアンの愛人であったアンヌに別れを告げてバスティーユ牢獄に向かい、部下からの報告を受けたルイも銃士隊を率いてバスティーユ牢獄に向かう。どうにかフィリップを助け出し、牢獄を脱出しようとする三銃士だったが、駆け付けたダルタニアンから牢獄が包囲されたことを告げられる。そしてルイが銃士隊を率いて牢獄に乗り込み、ダルタニアンにアラミスたちを殺せば罪を見逃すと落とし掛ける。
銃士隊に追い詰められ、ルイに降伏するように命令され逃げ場を失った三銃士とダルタニアン、フィリップ。そこでフィリップは自分の命と引き換えに4人の命を救うこを試みようとしたが、ダルタニアンに止められ、そしてフィリップは、ダルタニアンとアンヌの間に生まれた子供だと告げられる。そしてダルタニアンはフィリップを守るために戦うことを決心し、三銃士とフィリップと共に銃士隊に突撃する。ルイは銃士隊に発砲を命令するが、かつて勇名を馳せた銃士隊に畏怖し、狙いを外し、攻撃を止めてしまう。
ルイは自らフィリップを殺そうとするが、ダルタニアンがフィリップを守ろうとして盾となり刺され、ダルタニアンはフィリップやアラミスたちに看取られて息を引きとる。そのとき、ダルタニアンを尊敬していた銃士隊の一人がルイを取り押さえて引き渡す。こうしてルイと入れ替わって王となったフィリップは、自分の味わった苦しみを感じさせるためにルイに仮面をつけ幽閉するように命令する。
ディカプリオを守り立てる4人の大人の男に注目
「仮面の男」はアレクサンドル・デュマの『ダルタニャン物語』をベースに、ルイ14世と実在したといわれる鉄仮面の男の伝説、初老の元三銃士の活躍、王妃と銃士ダルタニアンの秘めた恋を描いた1998年制作のアメリカ映画です。監督、脚本は「ブレイブハート」や「パール・ハーバー」で脚本をつとめたアメリカ人の映画監督、脚本家、プロデューサーのランダル・ウォレスです。
仮面の男フィリップと王ルイの二役を若いレオナルド・ディカプリオが演じています。映画ファンでなくても名前は聞いたことがある、というくらい日本ではおなじみであらためて紹介するまでもないアメリカ人俳優です。「タイタニック」公開の翌年に公開されたこの作品でゴールデンラズベリー賞ワースト・スクリーン・カップル賞を受賞しています。レオ様と呼ばれ演技や作品よりもイケメンであることが注目を集めていた頃ですね。
フィリップとルイの父親でもある銃士ダルタニアンは、アイルランドの俳優、ガブリエル・バーンが演じています。ガブリエル・バーンは「ユージュアル・サスペクツ」で元汚職刑事のディーン・キートンを演じていた人です。
アラミス役は「奇蹟がくれた数式」でも紹介しましたが、「運命の逆転」でアカデミー主演男優賞を受賞しているイギリスの俳優です。舞台「Real Thing」でトニー賞、ドキュメンタリー番組「The Great War and the Shaping of the 20th Century」と、テレビ映画「エリザベス1世 〜愛と陰謀の王宮〜」でエミー賞の三冠受賞者のすごい人です。確かに「仮面の男」でもとても惹きつけられる大人の演技が素敵でした。
アトス役は「マルコヴィッチの穴」でニューヨーク映画批評家協会賞助演男優賞を受賞しているジョン・マルコヴィッチ。個性的な演技派俳優として世界的に活躍しているアメリカの俳優、映画プロデューサーです。元一流スパイ集団の活躍を描いた映画「RED」でも武器スペシャリストマーヴィンを演じています。
ポルトス役はプーチン大統領と親交がありロシア国籍も取得しているフランス人俳優のジェラール・ドパルデューです。ジェラール・ドパルデューも映画「グリーン・カード」でゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞しています。
セットのクオリティが映画を台無しに
タイトルは「仮面の男」ですが、三銃士とダルタニアンの4人が主役といっていいと思います。息子を失ったアトスや王への忠誠の誓いを破れないというダルタニアンが実はルイやフィリップの父親であったり、といったそれぞれの秘密や苦悩、悲哀が伝わり、若いディカプリオが演じ少々物足りなさを感じたルイやフィリップを気にさせないくらいです。
ディカプリオの演技はひどくはないけど、何か物足りなさを感じました。眼力がないのか、王の横暴さはセリフからは伝わってきますが、若すぎるのか綺麗な顔すぎるのか、イマイチ嫌らしさを感じられず、同じ横暴な王ならHBOドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」でジャック・グリーソンが演じたジョフリーのほうが、本当に腹が立つほどの性格の悪さで数段良かったかな。長期間のドラマと2時間程度の映画を比べられるものではないかもしれませんが。とはいえ、ディカプリオはイケメン枠で出演、ということで映画好き主婦にとっては十分満足です。王のときはもちろんのこと、囚われの身でひどい環境の牢獄に入れられていたはずでも美しさは隠せないくらい。この頃は本当に綺麗な顔でしたね。
ストーリーは中世ヨーロッパの宮廷を舞台にした歴史娯楽活劇なので、横暴な王に騎士として勇敢な男達が立ち向かうというような定番のお話ですが、日本の時代劇と同じように予定調和で十分楽しめました。ただ一番最初に鉄仮面の男がちらっと映るのですが、まるで日本の昭和初期のテレビかコントか、といったような仮面で思わず笑ってしまいました。また集中力を切らすくらい気になり残念だったのは、地下や牢獄のセットです。お金がかかってそうな映画の割にチープさが際立ちました。ラストに4人の銃士が剣を抜く見せ場のシーンもセットや照明がよければもっと感動できたはず!20年ほど前の映画ですが、その頃ってこの程度だったでしょうか。最近は海外ドラマもクオリティが高く、それに慣れているからなのかもしれませんが、もう少しリアリティのある感じにできなかったのかなと思いました。とはいえ、最後はハッピーエンドでスッキリできるので観てよかったし、機会があればもう一度観るのもありだなと思いました。