「スペース カウボーイ」のあらすじ

1958年、アメリカ空軍のテストパイロットチーム・ダイダロスは、アメリカ初の宇宙飛行士になるはずだったが、直前になって宇宙プロジェクトが空軍からNASAに移行。チームダイダロスの宇宙行きは中止となり、新設されたNASAによって宇宙へ行ったのはチンパンジーだった。

それから40年、妻バーバラと共に郊外の一軒家でのんびりと暮らしていたダイダロスのメンバー、フランク・コービンのもとにNASAからロシアの旧式の通信衛星「アイコン」を修理してほしいと要請が入る。衛星軌道上で旧ソ連によって作られ、ソ連崩壊後のロシアで引き続いて使われている通信衛星「アイコン」が故障により地球に落下しつつあるというのだ。ロシアはこの問題を自力で解決できず、NASAに援助を要請する。

NASAの責任者ガーソンはロシアに恩を売ることができると考え、ロシアに協力。アイコンの修復を部下に命じるが、NASAが調査したところ、通信衛星「アイコン」には、かつてアメリカが作った人工衛星「スカイラブ」と同じシステムが使われていることが判明する。

しかし、そのシステム自体が古いため設計に関わった者の多くは既に死亡し、修理できるのはスカイラブの設計者フランクだけだった。かつてチーム・ダイダロスの解散を命じたのが元上官ガーソンだったが、険悪なままの関係のフランクに協力を依頼せざるをえなかった。

なぜ自分の設計が旧ソ連の通信衛星に使われていたのか不思議に思ったフランクだったが、宇宙での作業をチーム・ダイダロスで行うなら、との条件付きで承諾する。そしてフランクはかつての仲間に話をするため順番に会いに行く。

元航空士で牧師になっていたタンクと元設計技師で機械技術を活かし現在はジェットコースターの設計に携わるジェリーの二人はフランクの依頼に快諾する。しかし、最後の一人で、かつてはパイロットとしてフランクとコンビを組んでいたホークは、チーム解散後フランクとわだかまりがあり一度は断るも、宇宙へ行く夢を忘れておらず、3人が集まっていた店にあらわれ、参加を決める。

そしてチーム・ダイダロスはNASAでガーソンの部下で最初にフランクの元を訪ねてきた女性科学者サラと合流し、身体検査から開始する。4人の老いた男たちにロシア軍のヴォストフ将軍はガーソンに不安を訴える。しかしガーソンは4人が身体検査をパスするはずがないと決め込み、「技術だけを聞き出し、フランクたちは宇宙には行かせない」と伝える。

ところが4人は協力してなんとか身体検査をパスし、訓練を開始する。訓練を共にする若い飛行士たちはダイダロスのメンバーをバカにした態度で、4人のもとに栄養ドリンクを届ける。

それでも4人は訓練を続け、最終仕上げとして地球帰還時の着陸シミュレーションを行う。そこでホークは最悪の条件の中、コンピューター制御に頼らない手動での着陸を見事に成功させる。

サポート役として任務に参加する予定の若い宇宙飛行士イーサンとロジャーは、そんなチーム・ダイダロスの姿に圧倒されはじめる。そして栄養ドリンクのお返しにとフランクたちは若い飛行士たちのもとへベビーフードを届ける。

訓練の一方、サラは宇宙飛行士の夢を諦めた過去を明かし、ホークは亡くなった妻との楽しい思い出を打ち明け、二人は次第に距離を縮めていく。

訓練の終盤、フランクはイーサンから本当のことを聞き出し、憤慨してガーソンに抗議する。ガーソンは反論し、さらにホークが精密検査の結果すい臓がんを患っていることが判明したと告げる。

そのころチーム・ダイダロスの存在はマスコミの報道により世間に広く知られ、老いた宇宙飛行士たちの挑戦は多くの注目を集めるようになっていた。その結果、NASAのイメージを良くするためにダイダロスは宇宙に行けることになったが、ガーソンはホークを除く三人で宇宙に行くよう指示する。

しかし、フランクやホークの気持ちを知ったサラがガーソンの説得に当たり、ホークも含めたメンバー全員が宇宙に行けることになる。こうしてチーム・ダイダロスは40年越しの夢を叶え、多くのアメリカ国民が注目する中、二人の若い飛行士イーサン、ロジャーと共に6名でスペース・シャトルに乗り込み宇宙へと飛び立つ。

その後シャトルはロシアの通信衛星「アイコン」をレーダーで捉えるが、ただの通信衛星であるはずが、なぜか防御システムを備えていることにフランクたちは気づく。嫌な予感を覚えつつ、フランクは装置の修復をすべく宇宙空間へと移動しアイコンの内部に入る。

すると驚くべきことに、そこには6基の核ミサイルがあった。通信衛星「アイコン」の正体が核ミサイル搭載した自衛能力付きのミサイル衛星だと知り、フランクは管制室にいるガーソンに真実を問いただす。

ガーソンは口をつぐんでいたが、ロシアの将軍ヴォストフが「アイコンは冷戦時代にアメリカの大都市を標的とするために作ったもので、ガーソンの元からスカイラブのシステムをKGBが盗み出した」と真相を語る。

フランクは修理を止め、衛星のエンジンを使って宇宙空間への投棄を考えるが、任務を優先するイーサンが独断でアイコンを衛星軌道上に戻そうと装置を起動させる。しかし、イーサンは操作に失敗し、アイコンは武装モードに切り替わりシャトルに衝突する。衝撃でイーサンは宇宙空間で気絶し、船内にいたロジャーも脳震盪を起こし意識を失う。そしてアイコンはそのまま地球に向けて落下を始める。

若い二人の飛行士は戦力にならず、フランクたちは事態の打開のため、困難な作業ではあったが、アイコンの予備エンジンを逆噴射させる。そして反動で地球への落下の阻止には成功する。だが、予備エンジンを使った影響で人工衛星の軌道に戻すことが不可能となり、衛星用の太陽パネルも破損してしまったため、軌道上に戻しても地球側から制御できないという問題に直面する。

これに対し、自分の死期を悟っているホークは、核ミサイルを利用して月に向かってミサイルを噴射させ、最終的に自爆させることを提案。地球に戻れなくなることを覚悟した上で自身の夢でもある月に向かうことを告げる。フランクたちは反対するが、他に取るべき方法がないことを悟り、ホークの考えを採用し、ホークは一人アイコンに残り、月へと旅立つ。

管制室ではサラがホークとの別れに涙していたが、新たな問題が発生する。アイコンとの衝突で受けた損傷により、シャトルの地上への着陸が困難になっていたのだ。NASAはフランクたちに着陸ではなく下降中の脱出を指示するが、フランクとタンクの二人でシャトルを運転し大気圏突入を成功させる。

ジェリーはイーサンとロジャーを船外へと脱出させ、自身はフランク、タンクとともに船内に残ることを決める。そしてフランクが模擬訓練でホークがしていたように、精密な操作をして、見事着陸を成功。チーム・ダイダロス地球に帰還する。

その後自宅に戻ったフランクは「ホークは月に辿り着いたはずだ」と語り、妻バーバラと共に月を眺める。月面では、ミサイルの破片とともにホークが横たわっていて、ヘルメットの反射ガラスには美しい地球が映し出されていた。

渋さが魅力のベテラン俳優の共演

「スペース カウボーイ」(Space Cowboys)は、2000年にワーナー・ブラザースで製作されたアメリカ映画で、クリント・イーストウッド42本目の主演作、22本目の監督作品です。『許されざる者』『ミリオンダラー・ベイビー』でアカデミー作品賞とアカデミー監督賞を2度受賞しています。この映画ではチームのリーダー的存在のフランク・コーヴィン役です。

自ら月に向かったホーク役は、ハーバード大学を卒業し1993年には「逃亡者」でアカデミー助演男優賞を受賞しているトミー・リー・ジョーンズです。「メン・イン・ブラック」のK役も印象的です。

ジェットコースター技師で女好きのジェリー役は、ドラマ「24 -TWENTY FOUR-」のジャック・バウアー役キーファー・サザーランドのお父さんドナルド・サザーランドです。数々の映画に出演している名脇役といわれるカナダ出身の俳優です。

ちょっと残念な牧師タンク役は「マーヴェリック」のジェームズ・ガーナーです。「マーフィーのロマンス」でアカデミー賞主演男優賞候補、その他の作品でも3度のゴールデングローブ賞、2度のエミー賞の主演男優賞に輝く実力派のアメリカの俳優です。残念ながら2014年に亡くなっています。

この映画の制作時、イーストウッド70歳、トミー・リー・ジョーンズ54歳、ドナルド・サザーランド65歳、ジェームズ・ガーナー72歳でした。

脚本はケン・カウフマンとハワード・クラウスナーです。ケン・カウフマンはロン・ハワード監督でトミー・リー・ジョーンズ出演の「ミッシング」でも脚本を書いています。撮影は製作・監督・主演した社会派ドラマ「トゥルー・クライム」のジャック・N・グリーンです。

4人のチーム名「ダイダロス」というのは「巧みな工人」という意味で、ギリシア神話に登場する有名な大工、工匠、職人、発明家です。

宇宙への夢を老後に実現させた4人の仲間の感動モノ

タイトルが「スペース・カウボーイ」というだけあって、ちょい悪オヤジ感を出した4人の老宇宙飛行士のウィットに富んだ話です。クリントイーストウッド、トミーリージョーンズ、ドナルドサザーランド、ジェームズガーナーの贅沢な共演というのがウリなのかな、と思いますが、舞台が宇宙というだけで、「グラントリノ」と同じく頑固で昔気質な男が危機を救うという平凡なストーリーでした。それなりに感動的な話ではありますが、泣けるほどでもなく、ドキドキ・ワクワク感はなく最初は少し眠たくなりました。スペースシャトルが飛び立ってから宇宙での話はまあ面白かったです。宇宙やらロケットやらミサイルやら衛星やらの知識があればもっと楽しめたのかなとも思います。

まだまだ若い者に負けたくない、というシニア世代の方には泣ける映画なのかなと思いますが、私はまだ観るのが早かったようです。まあそのうちですが。もちろん年配の方に敬意を払わなければいけないこともわかりますが、若い宇宙飛行士があまりにもダメな感じに描かれていてそれが残念でした。最後にシャトルから脱出した若者二人のその後もわからなくて、エンディングはちょっと物足りなかったです。世代は違えど協力して危機を回避するというようなストーリーのほうがまだ良かったかなと私は思います。

ちなみに宇宙飛行士の訓練ってとても大変なイメージがあったので、老人が宇宙飛行士の訓練をして実際に宇宙に行くなんて、リアリティないわ~と思っていたのですが、1998年に、ジョン・ハーシェル・グレンという人が、日本人宇宙飛行士の向井千秋さんと一緒に史上最高齢の77歳で宇宙飛行していました。ということはそんなにない話でもないんですね。グレンは宇宙飛行士としてアメリカ初の地球周回軌道を飛行した宇宙飛行士で、映画「ディープ・インパクト」でロバート・デュバルが演じたキャラクターは、グレンをモデルにしているそうです。