知念実希人さんの小説『仮面病棟』が映画化決定、というニュースがあり、本屋さんで見かけて気になっていた作品だったので早速読みました。
『仮面病棟』のあらすじ&感想
以前は精神科病院だった鉄格子で閉ざされた療養型病院に、たまたま先輩医師の代わりに当直バイトに入った医師・速水が目的の見えない立て籠もり事件に巻き込まれていく、というストーリーです。
ピエロの仮面をつけた強盗犯、拳銃で撃たれ負傷した若い女性、行動が不審な院長とスタッフ・・・と、謎が絡み合い、展開もテンポ良く、舞台設定も映像化向きの確かに映画化されると面白そうなストーリーだな、と思いました。
ただ、私は読んでいて、せっかく面白いストーリーなのですが、主人公を含め登場人物の性格が掴みにくいというか、いまいち共感できず、読み終わってもなんかモヤモヤしたままでした。
性格がいい悪いの問題ではなく、(島田荘司さんの御手洗潔シリーズの主人公、御手洗は性格がめちゃ悪くてイラッとくることもあるのですが、それはそれで面白い)、この『仮面病棟』の主人公、速水秀悟やヒロイン?の川崎愛美はなんというか、なかなか表現しづらいのですが、感情と行動が作られたもの、というか、かっこいい男ってこうだろ、いい女ってこうなんでしょ、って決めつけられたような感じで、だけどそれがどうもマッチしてなくて・・・。
もう少し丁寧な人物描写がほしかったかなぁ、と私は思いました。とはいえ、映画では、そんな主人公を坂口健太郎さんが演じられるということで、坂口健太郎さんファンの私としては助かった~って感じです。
坂口健太郎さんが演じられる速水がそのままイメージとして残りスッキリするだろうなと思うので、どんな風に演じられるかが楽しみです。
ピエロの仮面の立てこもり犯に撃たれ傷を負った女子大生の役に永野芽郁さん、ということですが、この配役はいいじゃんって思いました。
まあ、初対面の医師速水のことを、いきなり”秀悟さん”と呼ぶとかあたりは、もう少し色っぽいイメージの女優さんでもいいかもですが。そう!原作のこの”秀悟さん” ”愛美”の部分が気持ち悪かった(笑)
深読みするなら、著者がお医者さんということで、「○○先生」にすると、日常感が強いのかもですが、「先生」って、ちょっとだけ官能的な響きがあるから、そっちの方が私的には、すんなりストーリーを楽しめたかなって思います。
私的には”秀悟さん” ”愛美”がなければ、読後感は良かっただろうなぁと思います。著者は恋愛経験少なめかな?ってちょっぴり思ってしまいました。まあ私もかなり少ないので、私の感覚がおかしいだけかもだけど。
また、良いか悪いかは人それぞれですが、アマゾンのレビューで多くの方が書かれているように、一気読みはできます。本を読むのは遅い私ですが、久しぶりに一日で読み終えた本です。元々台本みたいな感じで、映像化しやすいだろうな~って思います。
ストーリーもオチもありがちだけど、物語としては面白いし、「天久鷹央の推理カルテシリーズ」などたくさん著書があるみたいなので、知念実希人さんの他の作品も読んでみたいな、とは思いました。映画も面白くなるだろうなぁと思います。ちなみに映画は2020年3月に全国公開されるそうです。
ばらのまち福山ミステリー文学新人賞
ところで、知念実希人さんといえば、『レゾン・デートル』で、広島県福山市が主催の、「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」を受賞された方です。現役?の医師でもあられるそうです。
「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」というのは、最終選考を福山出身の推理作家、島田荘司さんが行うという、ちょっと変わった?賞です。⇒★島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞
2008年に第1回が開催され、松本寛大さんの『玻璃の家』が受賞。
以降
第2回 叶紙器さん「伽羅の橋」
第3回 深木章子さん「鬼畜の家」
第4回 知念実希人さん「レゾン・デートル」*刊行時「誰がための刃 レゾンデートル」に改題
第5回 高林さわさん「バイリンガル」
第6回 植田文博さん「フロンタルローブ」*刊行時「経眼窩式」に改題
第7回 神谷一心さん「たとえ世界に背いても」*刊行時「たとえ、世界に背いても」に改題
第8回 原進一さん「アムステルダムの詭計」
第9回 須田狗一さん「殺人者は手に弓を持っている」*刊行時「神の手廻しオルガン」に改題
第10回 松嶋チエさん「魔手」*刊行時「虚の聖域 梓凪子の調査報告書」に改題
第11回 酒本歩さん「さよならをもう一度」
ちなみに第1回で優秀賞を受賞した水生大海さんの『少女たちの羅針盤』は2010年に映画化もされています。