イエスマン “YES”は人生のパスワードのあらすじ

中年の男カールがレンタルビデオ屋にいると、非通知で電話がかかってくる。カールは電話に出たくなかったが、うっかり通話ボタンを押してしまったため、仕方なく電話に出た。電話の相手は親友のピーター(ピート)で、夜の飲み会のことで電話をしてきたのだが、カールが普通にかけても出ないため非通知でかけたのだと言う。

カールはビデオ屋のレジに並んでいたのだが、「部屋にいる」と嘘を言い、特に理由もないまま断って電話を切ろうとする。そんなカールの行動をピーターはビデオショップの外で見ながら電話をしていたのだった。そして、飲み会へ連れられていき、そこには友達のルーニーと、ピーターの彼女のルーシーがいた。

飲み会でピーターからルーシーとの婚約パーティーに誘われるが、乗り気ではないカール。そのときバーのカウンターでカールの元妻ステファニーがボーイフレンドとイチャイチャしているところに出くわす。動揺するカールはその場を去ろうとするが、ウェイトレスと衝突して転倒してしまうという無様なところを見せてしまう。

翌朝、出勤のため自宅を出ると近所の老婦人テリーが朝食に誘ってくるがカールは断る。道では勧誘は拒否、ビラ配りのチラシも受け取らない。職場では、パソコンに届いているメールには「ノー」、昇進がなくなったカールを元気づけるために上司がパーティに誘うが、その誘いも断る。さらにラストチャンスにかける顧客の融資の申請も却下。そんな感じですべてを断ることが習慣になっていた。

そして昼休み。銀行の前で休憩をしていると、友人ニックが現れた。ニックは世界中を回っていろんなことをしたと言い、あるリーフレットを取り出す。そしてカールに「“イエスマン”になったんだ。“イエス”で人生変わるんだ!」と語るが、カールは全く興味を示さない。それでも、ニックはリーフレットをカールのポケットに押し込み、石を投げて銀行のガラスを割り強引に「セミナーに来い!人生を楽しめ、後悔する!」と言い残し、その場を逃げ去った。

ある晩、カールは自宅で映画を観ていると、ピーターから電話がかかってきたが、その電話にも出なかった。そのとき玄関のドアがノックされ、そこにはピーターがいた。ピーターに何度も電話したと言われ、一生に一度の婚約パーティに来なかったこと、婚約者に無関心なことを責められる。「このままだと1人で寂しく孤独のまま死ぬことになるぞ」と言い残してピーターは去っていった。

その後、ピーターに言われたとおりの孤独死しても友人から冷たくあしらわれる夢を見たカールは、ふとニックからもらったリーフレットを見て、セミナーに参加してみることにした。会場を訪れるとニックに声をかけられ、二人で並んで座った。セミナーの主宰者、テレンスの「イエス」の価値を説く言葉に受講者たちが一斉に〝イエス!〟と叫んで盛り上がっている雰囲気にカールは引いてしまう。

さらに初参加の人を紹介しようとテレンスが提案し、ニックがカールを推す。カールは自己紹介を断るが、受講者たちから「NOマン!」と非難される。そしてテレンスが「来ないなら私が行く!」と言い、全速力でカールの席までへ走ってきて語りだす。

テレンスはカールの日常を言い当て、「この建物を出たら、決断を求められる機会ではそれがどんなものであれ〝イエス〟と言え」と告げ、その指示を破れば災いが起きると言った。そしてカールは強引に「イエス」と答えさせられる。

会場を出るとカールにホームレスの男が公園まで車で送ってほしいと言ってきて、ニックが「イエス!」と言ったので仕方なく送っていく。途中ホームレスに携帯電話を貸すと、電池が切れるまで使われ、さらに別れ際に持っていたお金を「それ全部くれ」と言われ、やけになったカールは笑顔で「もちろんだ!」と渡す。

そして男と別れ、帰ろうとすると車がガス欠を起こし、夜の公園を抜け、ガソリンスタンドまで歩いていくはめにる。到着したガソリンスタンドでポリタンクにガソリンを入れようとしていると、スクーターに乗った女の子がやってくる。ガス欠になったことを話すとスクーターで車まで送ってもらえることになり、さらに別れ際にキスをしてもらえ、ツーショットの写真も撮ってもらい、カールは「イエス!」とつぶやく。

その翌日、セミナーのリーフレットを読んでいると銀行の上司ノーマンに休日出勤の依頼の電話がかかってくる。カールは、「イエス」と快諾して出勤する。そしてパソコンに届いた結婚相談所のイラン人花嫁のメールにもイエス、セレブケーキを考えた女性の融資依頼も「イエス」と承認していると、昇進候補だった同僚が休日出勤を断ったことで、カールの昇進を決めたとノーマンに言われる。

イエスと答えるとラッキーなことが続いたので、バーでピーターとルーニーに、いままでに自分の態度を謝り、どんなことにでも「イエス」と言うことを試すのだとピーターに宣言する。そこでピーターが試しに店員に「店の勘定はカールにつけて」と言うと、カールは驚きつつも「イエス」と答え、その晩は大はしゃぎする。

翌朝自宅のトイレで目覚め、外に出ると隣人の老婦人・ティリーに部屋の棚の取りつけを手伝ってほしいと頼まれ「イエス」と答えて手伝う。そして作業が終わるとティリーがお礼のお金を渡したいが手持ちがないため「ほかの方法でお礼を・・・」と迫ってきた。さすがに「ノー」と断って外に出るが、閉じたドアに服が挟まり、カールは階段をを転がり落ちる。「ノー」ということで災いが起きると告げたテレンスの言葉を思い出したカールは、ティリーの元へ戻り、誘いを受るのだった。

それからのカールは、職場では上司ノーマンからの『ハリー・ポッターの集い』というコスプレパーティの誘いにも参加することにし、宗教の勧誘などいろんなことにもイエスと答えて、韓国語教室、ギター、小型セスナの飛行訓練などにチャレンジする。

そしていつも受け取ってもらえないことでカールの顔を覚えていたビラ配りの男にも、自分からビラを取りに行く。ビラを自ら受け取り〝ミュンヒハウゼン症候群〟というバンドのライブにも行く。するとそのバンドのボーカルは、なんとガソリンスタンドで出会ったスクーターの女の子アリソンだった。アリソンと話をしたカールは、彼女が早朝6時に開催している「ジョギング・フォト教室」に誘われ、「イエス」と答える。

早起きのため寝ようとするとルーニーから飲み会に誘われ断れなかったカールは、ジョギング・フォト教室に二日酔いでハイな状態で参加する。みんなでジョギングしながら写真を撮っていると、カールは途中で倒れてしまう。アリソンは予測がつかない行動をするカールをミステリアスな人だと気に入る。アリソンも、決まりきった毎日を送りたくないといい、元カレがワンパターンな生活に満足する人間で、同棲していたのだがある日突然理由も言わず出ていったと話す。

一方カールはピーターにアリソンの話をしていたが、その頃のカールは何にでもイエスと答えたため、「イラン人花嫁紹介.com」で知り合ったイラン人女性・ファラヌーシュが同席していた。そこにピートの婚約者ルーシーがやってきて、ブライダルシャワーの幹事も引き受けることになる。ルーシーはカールが引き受けてくれたことを変に感じながらも感謝する。

その後、カールはアリソンを誘って、ノーマン主催のハリポタコスプレパーティに参加した。パーティを後にした二人はスクーターで街を走り、野外音楽堂に忍び込み、ステージの上で歌い、2人はキスをする。

翌朝、銀行に出勤するとそこには行列ができていて、銀行の副頭取が乱発する融資の件でやってきていた。ノーマンもカールも首かと不安になるが、カールが融資した顧客はみんな感謝し、98%以上が完済。小口の融資で融資の件数が多いことで結果的に利益も多大きくなった、とカールの重役昇進が決定した。

また、ブライダル・シャワーの打ち合わせでルーシーと店に打ち合わせにやってきたカール。そこにいた態度の悪い韓国系女性スタッフにカールは習いたての韓国語で悩みを聞き、彼女を元気づける。さらに飛び降り自殺しようとする男には、ギターで弾き語りをして男を説得し自殺も引き止める。

カールはアリソンと「ゆきあたりばったりの旅行をしよう」と空港へ行き次に出る便の飛行機に乗って、ネブラスカ州リンカーンに行く。リンカーン空港に到着してからも行き当たりばったりの旅を楽しみ、アリソンはカールに「一緒に暮らさない?」と話す。その言葉にカールは一瞬ためらった後、不安そうにイエスと答える。

そして帰りのロサンゼルス行きの飛行機のチケットを買おうとしたカールのもとに、FBI捜査官の2人の男がやってきて、テロリストの疑いをかけられ連行されてしまう。リンカーンというマイナーな場所に出発直前にチケットを買ったり、小型セスナの操縦免許を取ろうとしたり、イラン人花嫁紹介.comの会員であったり、有機肥料の配達業への融資をしたりするのは、すべてテロ計画のためではないかと疑われているのだった。

質問に「ノー」と答えたが、信じてもらえないため、弁護士のピーターに助けを求めた。ピーターがやってきて、カールが自己啓発セミナーに参加し「イエス」と答えると誓ったため、それらの行動は全ての問いかけに「イエス」と答えた結果だと事情を説明してくれて、誤解は解けた。

ところがその説明を聞いたアリソンは、「一緒に暮らさないかと誘った時に一瞬答えが遅れたのは、ノーだったからだ」「本心がわからない」と言いその場を去った。ロサンゼルスの空港に到着してもアリソンはカールとピータの前を行き、ピーターはカールに「何も考えずにイエスと言い続けた結果だ」「問題は1つずつ検討して解決すべきだ」と話した。空港で別れた後、カールはアリソンに電話をかけたり、アリソンのライブに行ったりするが、アリソンには無視される。

ある日、仕事でカール自らが働いていたノーマンの支店を閉鎖する通達をするよう副頭取から依頼される。コスプレパーティをしていたノーマンにそのことを告げノーマンは号泣する。自宅に戻ってピーターからの留守電のメッセージを聞いて、幹事を引き受けたピートとルーシーのブライダル・シャワーが明日だということを思い出して焦る。だがカールは機転を利かせ、融資をした顧客やノーマンや、式場の韓国人スタッフなどいろいろな人を招待し、サプライズパーティは大成功だった。そしてカールはアリソンに電話をしてみるが電話には出なかった。

パーティから自宅に戻ると、元妻・ステファニーから電話があり呼び出される。恋人と喧嘩して彼が出ていった、といいカールに泊まっていってくれと迫られるが、カールは「ノー」と言って断る。ステファニーの部屋を出て、エレベーターに乗ると、エレベーターが誤作動を起こし止まったり、車がレッカー移動されていたりしたことで、ノーと答えた呪いだとパニックになったカールは、セミナー〝YES〟の講師テレンスの車に忍び込む。

急に話しかけられ驚いたテレンスは事故を起こし、2人とも病院へ担ぎ込まれてしまう。目を覚ましたカールが付き添っていたピーターとルーニーに「天罰が下った」と話していると、隣のベッドにいたテレンスがカールはテレンスの教えを誤解したのだと話始める。そしてテレンスの説明に納得したカールは、病衣のまま走り出す。

病院で融資した男性看護師・リーに出くわし、バイクを借りたカールは、アリソンの「ジョギング・フォト教室」に行く。カールはアリソンに「一緒に暮らせない」「でも一緒にいたい」と告げる。「何と言ったらいいのか…」と戸惑うアリソンにカールは「イエスと言って。ただ、それが本心なら…」と言う。アリソンは「かもね」と答え「あの言葉は言えない」と言い、そして2人はキスをした。

後日、ホームレス支援所でボランティアするアリソンに、カールが大量の衣服を持ちこむ。喜んで衣服を寄付する人を大勢知ってると、カールは言う。そして〝YES〟のセミナー会場では、参加者は全員がほとんど全裸となっていたのだった。

実話体験が原作のコメディ映画

「イエスマン “YES”は人生のパスワード」は2008年制作のアメリカのコメディ映画です。番組プロデューサーや司会者などで活躍するイギリス人のダニー・ウォレスが、自ら6ヵ月間実践した体験を元に執筆した「Yes Man」が原作で、監督はペイトン・リードです。ペイトン・リードはアメリカの映画、テレビドラマの監督で、2014年には、降板したエドガー・ライトに代わって映画「アントマン」の監督をしています。

主演はカナダ出身の俳優、ジム・キャリーです。映画「マスク」のヒットでコメディ俳優として様々な作品に出演しています。コメディ以外でも「トゥルーマン・ショー」「マン・オン・ザ・ムーン」で2年連続ゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞しています。

ヒロインのアリソン役はアメリカの歌手で女優のズーイー・デシャネルです。「あの頃ペニー・レインと」や「(500)日のサマー」の他日本では未公開の作品などにもたくさん出演しています。

カールの友人で弁護士のピーター役は、アメリカ人俳優ブラッドリー・クーパーです。「世界にひとつのプレイブック」で第85回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、以降「アメリカン・ハッスル」「アメリカン・スナイパー」と3年連続でアカデミー賞にノミネートされています。1998年テレビドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」がデビュー作だそうです。

セミナー“YES!(イエス)”の代表テレンス役は、イギリスの俳優テレンス・スタンプです。1965年、映画「コレクター」の誘拐犯役でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞しています。「ワルキューレ 」や「スーパーマン 」などたくさんの作品に出演しています。

ブラッドリー・クーパーにハマるきっかけになった映画

この映画は難しく考えず、コメディ映画として気軽に観れば、普通に面白いので娯楽として最高です。

極端なストーリーで、現実的ではないですが、私自身、誘いは断ってばかりなので、なんでも拒否していないで、たまには「イエス」と言ってみてもいいかも、というくらいのメッセージは受け取りました。行動に移そうとまではいかないところが、コメディです。

ジム・キャリーの映画は、子供の頃「マスク」を観たのが最初なので、面白い人だ、という印象ですが、下品で嫌い、という人も多いそうです。私は映画でしか観たことないのですが、そんなに下品なのかなぁ、と不思議です。ジム・キャリーが面白い、ということではありませんが、日本のお笑いもなかなか下品で、日本人と外国人のお笑いの違いをこんなところでも感じます。この映画を観て、久しぶりに「マスク」を観たくなりました。

この映画で、一番のお気に入りは、ピーター役のブラッドリー・クーパーがイケメンだ、ということです。「そんな彼なら捨てちゃえば?」にも出演していますが、印象に残っていないのでもう一度見直して、ああこの可愛そうな夫ね、と思い出しました。ブラッドリー・クーパーは2011年11月「ピープル」誌の「最もセクシーな男性」に選ばれているそうで、この映画でブラッドリー・クーパーを知り、「世界にひとつのプレイブック」や「二ツ星の料理人」など、いろいろ観ましたが、本当に素敵です。

講師役のテレンス・スタンプもよかったです。怪しさ満載のセミナー講師は、本当に胡散臭いのですが、それを渋いテレンス・スタンプが、淡々と真面目に演じる感じが笑えました。他にも、ストーリーとしては、予想外の展開はとくにないですが、それぞれのキャラクターが、要所要所で笑わせてくれるので最後まで楽しく観れました。ハッピーエンドで、最後のヒトネタで、くすりと笑えるので、年末年始に観るのもいいかもですね。