スプリットのあらすじ

女子高生のクレアの誕生日パーティーが開かれ、たくさんの友人たちがクレアの家に集まっていた。そこには同じクラスのケイシーも参加していたが、クラスでも浮いた存在のケイシーは、パーティーでも浮いていた。

パーティーは終わり、参加した友人たちは帰っていくが、マルシアとケイシーには家族の迎えがなかったので、クレアの父親が車で送っていくことになった。

車には先にクレアとマルシア、ケイシーが乗っていて、クレアの父親はトランクを開けていると、背後から何者かに襲われて車の外で気絶してしまった。

クレアの父親を襲った男は運転席に乗り込み、マスクをして後部座席に乗っていたクレアとマルシアにスプレーを吹きかけ、気絶させた。

助手席に乗っていたケイシーはそっとドアを開けて逃げようとするが、男に気づかれ、クレアたちと同様スプレーをかけられ気絶させられた。

目覚めたケイシーは、クレアとマルシアと一緒に部屋に監禁されていることに気付く。

そのとき、男が入ってきて神経質な感じで椅子をきれいに拭いて座り、マルシアを連れ去ろうとする。

男が潔癖症であることを見抜いたケイシーは、連れていかれるマルシアに「オシッコしちゃえ」と耳打ちする。

マルシアは本当にオシッコをしてしまい、怒った男はマルシアを部屋へ戻す。

戻ってきたマルシアは部屋には鍵がかかっていることを二人に伝える。

クレアが、「男は1人だから3人で襲おう、半年空手も習っていた、」と提案するが、状況を把握してから慎重に行動したほうがいいと思っているケイシーは「マルシアを軽々と持ちあげていた」と指摘してクレアを止める。

その頃、初老の女性カレン・フレッチャー医師のもとには、バリーから「至急会いたい」というメールが入っていた。

バリーというのはオネエ風の洋服デザイナーで、フレッチャー医師の患者で解離性同一性障害(多重人格者)のケビンの人格のひとつだった。普段ケビンの身体の主人格でリーダー的な存在でもあり、デザイナーとして会社に10年も勤務していた。

解離性同一性障害について世間ではあまり認知されていなかったが、フレッチャー医師はケビンの中に23の人格があることを突き止めていて、ケビンの良き理解者だった。

一方、ケイシーたちが監禁されている部屋の外で、2人の人物の会話が聞こえてきたので、クレアたちがドアの隙間から覗くと、ハイヒールと黒いロングスカートが見えた。

犯人の男以外の人がいると思った3人は、助かるかもしれないと期待するが、ドアを開けて入ってきたのは、女装した犯人の男だった。

見た目は男なのに完全に女性としてふるまう男に、3人は絶句する。次にもとの神経質な男が現れ、洗面所を掃除しろ、綺麗に部屋を使えと命令し、さらにお前たちを連れてきたのは、聖なる食料にするためだと言って去っていった。

さらに翌日には、3人の前にまた別の人格が現れる。少しバカっぽい様子で、男はヘドウィグと名乗り9歳だと言った。そしてケイシーたちは、男が多重人格者であることを把握した。

目の前の男が、今は子供の人格だとわかったケイシーは、ヘドウィグを呼び、男がヘドウィグを生贄にするらしい、と話す。そして泣き出すヘドウィグにケイシーが「私たちはきみのお守り役なの」と機嫌を取り、ヘドウィグを協力者にしようとした。出口を聞き出そうとするが、ヘドウィグは「信じない」と言って立ち去ってしまう。

3人は部屋の脱出口を探すため、壁や天井を叩いて音の変化を探ってみると、天井に1か所、音が軽いところがあった。ケイシーが見張りをし、クレアがその場所の壁紙を剥いでみると、通風口が塞がれていた。

ヘドウィグが戻ってきたのでケイシーとマルシアは必死で扉を押さえ、その間にクレアがなんとか壁紙を剥いでいく。ヘドウィグから神経質な男デニスになった男がドアに体当たりし
ドアは破られたが、クレアは通風口を開け、一人で配管を進んでいき、その先にあったロッカーに隠れた。

しかしデニスに見つかり、クレアが逃げているときにセーターを汚したことに怒っデニスは脱げと命令し、クレアを一人だけ別の部屋に監禁した。さらに、戻ってきたデニスにマルシアは失禁して汚してしまったスカートを脱がされた。

一方、フレッチャー医師はフランスの大学の講義依頼を受け、スカイプで学生たちに解離性同一性障害の講義をしていた。解離性同一性障害の患者は、ライト(照明)と呼ばれる権利を得て出てくる人格によって、IQや体力もそれぞれ異なると言う。

苦悩を通じて脳の能力を解放したのかもしれないと、フレッチャー医師は指摘し、「超能力というのは彼らに由来するのかもしれない」と話した。

その後、フレッチャー医師のところに、再びバリーが訪れる。そのときフレッチャー医師は、人格がバリーではないことを見抜くが、本人はバリーだと言い張る。フレッチャー医師は、男の中にある23の人格が派閥を作り、何か企んでいるのではないかと考えたが、どの人格が何を考えているのかまではわからなかった。

ケビンには女性の人格であるパトリシアが出現していて、ケイシーとマルシアに食事をはこび、ケイシーの髪の毛をとかした。

パトリシアに「まともな場所で食事がしたい」と訴えると、ケイシーとマルシアはキッチンに連れていってもらえた。ケイシーは廊下に窓があれば脱出できるかもしれないと思っていたが、窓はなく、一人でいるクレアに会いたいと言っても聞いてもらえなかった。

キッチンでパトリシアが二人に背を向けてサンドイッチを作っている間に、マルシアは椅子でパトリシアを殴って逃げ出すが、出口を見つけることができず、別の部屋に一人で閉じ込められた。ケイシーはパトリシアに、持っていた包丁で脅され部屋に戻った。

フレッチャー医師は、ケビンの行動を不審に感じ始めていて、バリーとして来ているケビン
はデニスの人格で、バリーが助けを求めるために自分にメールを送ってきていると考えていた。

バリーに抵抗する人格、デニスとパトリシアは、クライマーのようにやすやすと壁をのぼり、皮膚はサイのように硬いという24番目の人格「ビースト」が自分たちの中に現れると信じていて、それを他の人格にも話したが、信じたのはヘドウィグだけだった。

そしてデニスとパトリシア、ヘドウィグの3人格が手を組み、ケビンの人格の中でリーダー的だったビリーをその地位からひきずりおろし、他の人格をも押さえこんだ。

フレッチャー医師は、男を本名のケビン・ウェンデル・クラムというフルネームで呼べば、ケビンに戻せることを知っていたが、それは、男のプライドを傷つけ、自分と男の絆をなくすことになるので、使いたくないとバリーだと主張していたデニスに話す。

そしてデニスはやっと、自分がデニスだと認めた。デニスという人格はケビンの父親が列車の事故で死んでしまったときに現れた人格だった。フレッチャー医師は24番目の人格が発生するのを防ぐため、24番目の人格など存在しないと、デニスに言い聞かせるが、デニスは否定し帰って行った。

ケイシーは少年の人格ヘドウィグをうまく手なずけ、ヘドウィグの部屋に案内してもらう。「窓のそばで踊る」とヘドウィグが言っていたので、窓があることを期待していたが、部屋にあったのは絵に描かれた窓だった。

ヘドウィグはケイシーが本物の窓があることを期待していたとわかり、バカにされ利用されたと思い、デニスのトランシーバーを見せつけた。そのトランシーバーは外部と通じていたので、ケイシーは誘拐されていると無線の相手に必死で訴えたが、相手はイタズラだと思い信じてもらえなかった。そしてヘドウィグはパトリシアに変わり、ケイシーは部屋に戻された。

その頃フレッチャー医師は、バリーからたくさんのメールが入っていることに気づき、ただごとではないと感じ、デニスに連絡を取り、家へと向かった。フレッチャー医師はデニスに「ケビンにはあなたたちがいて幸せだわ」と話した。ケビンは小さな頃から母親の厳しいしつけを受けていて、そのためケビンの中に最初の人格バリーが現れたのだった。

デニスは「ビーストはみんなのなかでいちばん背が高く、筋骨隆々。髪はたてがみのように長い。負の存在ではなく、英雄の具現化だ。不純な若者を食べる」とフレッチャー医師に話した。フレッチャー医師は、他の人格からビーストの話を聞いていたが、デニスから初めてビーストの具体的な話を聞き「明日、ぜひ記録を取らせてほしい」と言った。デニスは24番目の人格がいると認められたと喜んで引き受けた。

そしてフレッチャー医師は帰る際に、洗面所を借りたいと言い部屋を出て、灯りがついていた部屋を開け、一人で監禁されていたクレアを見つけた。しかしデニスが現れスプレーでフレッチャー医師を眠らせ、リビングのソファに寝かせた。

デニスは外出しパトリシアの人格で花を買い、列車事故で死んだ父親のためにホームに献花し、列車の中に入ってシャツを脱ぎビーストへと変貌した。ビーストは列車から飛び出して超人的な反射神経で走って帰った。

一方、デニスが外出したことを知り、隣接した部屋に監禁されていたマルシアとクレアは、見つけたハンガーで外から部屋の鍵を外そうとする。フレッチャー医師も朦朧としながらも、なんとか机に向かい紙に何かを書いていた。

ケイシーはパソコンを見つけるがネットには接続していなかった。画面に、人物の名前のファイルがあったので、ケイシーがクリックすると、動画がながれ、ジェイドという人格の時にはインスリン注射が必要な糖尿病の患者で、オーウェルという人格は歴史オタクだと知った。そしてバリーの人格の動画で、誰かが照明(ライト)を盗んでいるという話をしていた。

そのときビーストが戻ってきた。フレッチャー医師は気配を察し、机の上にあったナイフでビーストを刺した。ところがビーストの皮膚が硬すぎてナイフは刺さらず、フレッチャー医師はビーストに抱きかかえられ、そのまま脊髄を折られて死んでしまった。

ケイシーは、動画の中でバリーがクローゼットの洋服かけに、鍵束を隠しているのを見て、鍵束を見つけた。

鍵束を持って廊下へ出たケイシーは、クレアとマルシアを探したが、マルシアは血まみれですでに息絶えていた。続いてケイシーはクレアを見つけたが、ビーストに下半身が引きずられているところだった。

さらに、ケイシーは1人で脱出しようと入った部屋で、フレッチャー医師の死体も見つける。そこに「彼の名前を呼んで ケビン・ウェンデル・フラム」というメモを見つけたケイシーは、追ってきたビーストに対して必死でその名を呼んだ。するとビーストは静かに部屋の隅に移動した。ケビンは幼いころ、母親に叱られる時にフルネームで呼ばれていたのだった。

ケビンとなった男には記憶がなく、ケイシーに「君は誰だ? 僕は何をした? 君を傷つけたのか?」と聞いた。そして死んでいるフレッチャー医師を見て、「誰がやった?」と聞いた。男の本来の人格を知ったケイシーに、ケビンは「戸棚の下に銃がある。弾は制服用ロッカーの中」と教えた。

その後ケビンに次々にジェイドの人格が出て来てたり、オーウェルの人格が出てきたり、と自我が崩壊していった。バリーやヘドウィグの人格が出たあとで、パトリシアの人格がケビンの人格を眠らせる。

パトリシアの人格は、ビーストの存在を維持するためには、より大勢の若者を用意せねばならないと言い、再びビーストへ変身した。

ケイシーは棚から銃を取り奥へ進み、ケビンのロッカーを見つけ、弾も手に入れる。

ビーストに追いつかれ、ケイシーは左足のふくらはぎを噛まれるが、逃げながら銃に弾をこめた。ケイシーは必死に出口を探し廊下を歩き回ったが、天井からぶらさがっていたビーストがケイシーの前に降り立ちゆっくり近づいてきた。

銃を持ってケイシーはビーストと対峙するが「銃で俺を殺せない。俺は人間ではない」とビーストが言った。ケイシーは2発の弾を発砲しビーストの左胸、右脇腹に弾は命中したがビーストは出血すらしなかった。

ケイシーを襲うために鉄格子を手で開けようとしたビーストだったが、ケイシーの身体にあった無数の傷跡を見て手を止めた。

実はケイシーも、父親が死んだ後にケイシーを引き取った叔父に虐待されていたのだった。

ケイシーの体の傷を見て、ケイシーも虐待された過去があることを悟ったビーストは、「お前は他の連中と違う。お前の心は汚れていない。喜ぶがいい」と言いケイシーの前から立ち去った。

ビーストが去った後、やってきた職員によって、ケイシーは無事に救出された。ケイシーたちが監禁されていたのは動物園の管理棟の地下だったのだ。建物では警察による捜査が始まり、、ケイシーを迎えに保護者である叔父がやってきたが、パトカーから出られるか?と聞く女性警察官に、ケイシーは無言で見つめ返す。

一方逃亡したビーストには他の人格も健在で、ビーストの誕生を、パトリシア、デニス、ヘドウィグは喜んだ。そして次は「私たちの強さをみんなに知らしめることだ」と、デニスが言った。

レストランで、解離性同一性障害の男が起こしたこの事件のことを放送していたテレビに見入っていた女性が「15年前に起こした車椅子の男性の事件もあったよね」と話す。

その男性の名が女性は出てこなかったが、横にいた男性が「ミスター・ガラス」と言った。

M・ナイト・シャマラン監督のホラー・スリラー

「スプリット」(Split)は、2017年公開のアメリカの多重人格スリラー映画です。この映画だけでも楽しめますが、2000年に公開された「アンブレイカブル」の続編で、2019年「ミスター・ガラス」へと続く映画です。

監督はインド系アメリカ人の映画監督、M・ナイト・シャマランです。ブルース・ウィリスが主演の1999年の映画「シックス・センス」でアカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされ、広く知られました。

主役のケビン役で24人の人格を演じたのは、スコットランドの俳優ジェームズ・マカヴォイです。2005年公開の映画「ナルニア国物語~第1章,ライオンと魔女」のタムナス役で英国アカデミー賞ライジング・スター賞を受賞、2006年「ラストキング・オブ・スコットランド」で、英国アカデミー賞助演男優賞及びヨーロッパ映画賞主演男優賞にノミネート、2007年公開の映画「つぐない」でゴールデングローブ賞ドラマ部門主演男優賞にノミネート、ロンドン映画批評家協会賞英国主演男優賞を受賞しています。

一人生き残った女子高生のケイシー役は、アメリカの女優アニャ・テイラー=ジョイです。2015年にサンダンス映画祭で初上映され、2016年にアメリカで公開されたロバート・エガース監督のホラー映画「ウィッチ」のトマシン役で高い評価を受けています。

フレッチャー医師役はアメリカの女優ベティ・バックリーです。ミュージカル「キャッツ」でグリザベラ役を演じ、トニー賞助演女優賞を受賞しているミュージカル、舞台、ドラマでも活躍している女優です。

クレア役はアメリカの女優ヘイリー・ルー・リチャードソン、マルシア役はイギリスの女優ジェシカ・スーラです。

前作「アンブレイカブル」を観ていたほうが、より楽しめる

この映画は、前作「アンブレイカブル」のことなど知らず、Amazonプライムで、何気なく観ました。評価があまり高くなかったので、期待していませんでしが、思ったより面白かったので、他の人のレビューなんかも観ていたら、「アンブレイカブル」の続編であることや、「シックスセンス」の監督の作品、ということでした。さらにこの「スプリット」の続編「
ミスター・ガラス」も公開予定ということで、その前に「アンブレイカブル」も観ておきたい、と思います。

「スプリット」だけを観てもそれなりに面白いのですが、「アンブレイカブル」を観ているとより楽しめるようです。ケビンの父親が死んだという列車の事故が、「アンブレイカブル」でブルース・ウィリス演じるデヴィッド・ダンが生き残った列車事故のことだそうです。

ラストのシーンで、車椅子の犯罪者の名前を思い出そうとする女性に男が「Mr.ガラス」と教えるシーンがあり、観ているときはこの意味ありげな感じはただの演出?と思いましたが、なるほど前作があったのか、と後々わかりました。

とはいえ、この映画だけでも充分私は楽しめました。ホラーというほど怖くないし、ひどい経験をしていても強く賢く生きている女子高生ケイシーは助かったし、で見終わったあとスッキリしました。

フレッチャー医師があっけなく死んでしまったり、事件が解決したあとに、問題の叔父さんが迎えに来たその後のことが描かれていなかったのは少し残念でしたが、続編の「ミスター・ガラス」でもケイシーは登場するようなので、楽しみです。

さらに他の人のレビューなどには、並んだロッカーの名前やフレッチャー医師のもとに届いたメールの数など、私の気づかなかったことがいろいろ指摘されていたので、「アンブレイカブル」も観たあとで、その辺もふまえてリピ観してチェックしたいと思いました。