「ふがいない僕は空を見た」のあらすじ

高校生の斉藤卓巳は、アニメの同人誌即売会で、あんずと名乗る主婦・岡本里美と出会い、学校帰りに里美が暮らすマンションで密会するようになっていた。

卓巳は里美のお気に入りのキャラクター「ムラマサ様」のコスプレをさせられ、「計算してるから避妊しなくていい」と里美に言われ、お金をもらい日常的に情事に耽っていた。

そんなあるとき、卓巳は同級生の松永七菜から告白され、それを機に里美に別れを告げる。

里美は夫・慶一郎との間に子供ができず、姑のマチコから不妊治療を強要され、人工授精など治療を始める。姑からのプレッシャーや苦痛な治療、マザコンの夫に里美は慶一郎への愛情が薄れ、卓巳との関係だけが心の拠り所だった。

しかし、ある日里美の行動を不審に思った慶一郎に寝室を隠し撮りされ、卓巳との不倫が慶一郎とマチコにバレてしまう。里美は離婚を申し出たが、慶一郎は離婚したくないといい、マチコの差金で代理母を捜すためアメリカに行くことになった。

卓巳の友人・福田良太は、古い団地住まいで、認知症の祖母と2人でギリギリの生活していた。祖母は辺りを徘徊し、新しい男とよそで暮らしている母親には消費者金融の督促が後を絶たない、そんな暮らしにうんざりしていた。

生活のためコンビニでアルバイトをしている良太は、団地生活から脱出するための武器を備えるため、バイトの先輩・田岡から勉強を教えてもらうようになる。田岡は医者の息子で、福田の祖母を父親の病院に入院させるが、彼もまた心の闇を抱えていた。

一方、良太と同級生で同じ団地に住み、同じような境遇のあくつ純子は、アニメ好きの姉が見つけたネット上のセックス中の卓巳と里美の画像をみつけ、憂さ晴らしにプリントアウトする。その画像は慶一郎がネットにあげたものだった。

里美との写真や動画がばらまかれた卓巳は、学校を休み家に引きこもるようになった。

良太は卓巳も心配するが、日々の荒んだ生活や卓巳への嫉妬心など複雑な感情で、あくつと2人で写真を学校にばらまき、町中の郵便受けに入れる。

卓巳の家は母親、寿美子が助産院を開業している母子家庭で、学校に来なくなった卓巳の様子を見に来た担任の野村をみて、寿美子は妊娠していることに気づく。

良太も引きこもる卓巳の様子を見に来て、「自分だけが不幸なふりしてんじゃねえよ」と言う。

野村の出産の無事を祈るため、寿美子が夜の神社を訪れると、そこには卓巳がいた。

泣きながら謝る卓巳に、寿美子は「生きててね。生きてそこにいて」と言って、目を閉じて手を合わせます。

母親や良太の言葉に心が動いた卓巳は、学校に通い始めます。

そして卓巳は助産院での出産に立ち会い、生まれてきた赤ちゃんに微笑みかけた。

タナダユキ監督が窪美澄の小説を映画化した作品

「ふがいない僕は空を見た」は、窪美澄さんの小説を映画化した作品です。監督は2008年公開「百万円と苦虫女」で日本映画監督協会新人賞を受賞しているタナダユキさんです。蜷川実花さんが監督した「さくらん」では脚本を担当されています。

主演の斉藤卓巳役は、永山絢斗さんです。お兄さんが俳優の瑛太さんであることも有名です。テレビドラマ「おじいさん先生」で俳優デビューし、2010年の映画「ソフトボーイ」で映画初主演。日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞しています。

W主演で岡本里美を演じる田畑智子さんは、1992年公開の映画「お引越し」で主演女優としてデビューし、新人賞を多数受賞し2000年、NHK連続テレビ小説「私の青空」でヒロイン北山なずなを演じています。2018年には俳優の岡田義徳さんと結婚し、お子様もいらっしゃいます。

卓巳の同級生、福田良太役はドラマ「チェケラッチョ!! in TOKYO」で初主演を務め俳優デビューしている窪田正孝さんです。2014年のNHK連続テレビ小説「花子とアン」の朝市役で知名度が上がり、数々のドラマや映画に出演されています。

卓巳の母、寿美子役は原田美枝子さんです。1976年の映画「青春の殺人者」などに出演し、10代でキネマ旬報主演女優賞などを受賞しています。多くの監督からオファーを受けたり、日本アカデミー賞主演女優賞など数々の映画賞も受賞されている評価の高い女優さんです。

良太のバイト先の先輩田岡役は三浦貴大さんです。三浦貴大さんの御両親は俳優の三浦友和さん、元歌手で女優の山口百恵さんで、シンガーソングライターで俳優の三浦祐太朗さんがお兄さんという芸能一家です。2012年に「ふがいない僕は空を見た」や他の作品での演技が評価され第86回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞を受賞しています。

他、あくつ純子役は小篠恵奈さん、松永七菜役は田中美晴さん、里美の夫、岡本慶一郎役は山中崇さん、姑役は銀粉蝶さん、出産を控える妊婦役で吉田羊さんも出演されています。

生と性について真面目に考えたい人におすすめの映画

原作を知らず、窪田正孝さんが出ていると知って観た映画です。公開当時は田畑智子さんと永山絢斗さんのベッドシーンも話題になっていました。過激なのは前半くらいですが、最後まで暗いくて重いストーリーです。人のいやな面をみないといけない、という不快なところも多かったです。

生と性がテーマの作品、ということで私には正直あまりピンとこない、というか共感できるところは少ない物語でした。生と性についてそんなに真面目に考えたことがないし、これからも多分ないと思うので。もちろん私も人と比べて卑屈になることはあるし、人に嫉妬することもあるから、気持ちはわからないではないけれど、それぞれの登場人物はもうちょっと生き方があるのでは?と思いました。

「これが本当のリアル」と作品レビューで書かれている方もいらっしゃいましたが、本当のリアルはみんな結構我慢するし、そんなことで人を貶めたりしない、と思うのは私だけでしょうか。平和な暮らしをしているだけかもしれません。

あとは助産院の話も少し触れられていましたが、結局何かあったら病院を頼るんだから、最初から病院で生むべき、という意見に賛成です。自己満足で周りの人に迷惑をかけるだけだと思ってます。まあ出産したことはないので、意見する権利はないかもしれませんが。

この「ふがいない僕は空を見た」と映画「はさみ hasami」で第34回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞、第27回高崎映画祭最優秀助演男優賞を受賞しているというだけあって、映画では窪田正孝さんが主役といってもいいぐらい、印象に残りました。

もっとも話題となった最初のベッドシーンや、作品のテーマに関わる出産のシーンよりも、良太の生活苦、複雑な感情、バイト先でのできごとや先輩田岡の存在などのほうが、物語として面白かったです。全体を一言で言うと、昼ドラと社会派ドラマ、道徳の授業を足したような映画です。

ちなみに、映画を観たあと、原作も読もうとしましたが、途中まで読んで、飽きてしまいました。エロにしか興味がなかった、ってわけではありません。文章が私には合わなかったのかな、と思います。あまりハッキリとは覚えていませんが、なんか全体的に不快というか気持ち悪かったです。だからこそタイトルが「ふがいない僕は空を見た」なのかもしれません。

平和ボケする主婦の浅い感想です。