じっくり長編を楽しみたい方におすすめ。内容は難解ではないので、一気読みもできます!

小説「星籠の海」の感想

まずこの作品を読む前に『異邦の騎士』を読んでいて、そちらがとてもおもしろかったので、映画化もされた作品というこちらの作品を上下巻購入してから楽しむことにしました。

四国、松山沖の小さな島に死体が次々と流れ着くという謎も面白いし、地元が近い私としては読む前の期待値は高めでした。

解説を読んで知りましたが、この作品は映画化ありきで書かれた作品だそうで、なるほどそれで会話が多いんだな、と納得。

読み始めは軽い会話が続くので、長編といえどライトな感じで、すぐに読み終えるかなと思っていましたが・・・。

実際は思った以上に読み進めることができずだいぶ時間がかかってしまいました。

物語は、御手洗潔が死体漂着事件の鍵が、古から栄えた港町、福山市鞆にあることを見抜くのですが、その鞆では、一見無関係の複数の事件が発生します。

このあたりがちょっとひとつひとつの事件の話が長いので、読むのがつらかった。いくつか別の小説ができるんじゃないか、と思うくらいいろんな登場人物、サイドストーリーが出てきます。

前半で女性の意味不明な依頼に言いなりの男にかなり違和感を感じ、イライラすらしましたが、後半で、なるほどそういう裏があった訳ね、といわゆる伏線回収?がありスッキリできて良かったです。ここが一番おもしろいところでした。

なんか変だな、自分には合わないかも、で読むのをやめるのはもったいない、と思わされた瞬間でした。

ただ、大学教授の女性のキャラが私にはちょっぴり嫌な感じなのと、男性の助教授、博物館学芸員の三角関係が中途半端な感じで出てきて、男性助教授が殺人事件の犯人にも係わらず、なんとなく捕まってフェードアウトするのはちょっと可哀想かな、と。

あと、子供のイジメ問題&なぜか白血病で死ぬ場面ってなくても別に・・・いや、これを言い出したらキリがなくなるのでやめときますが。

私は御手洗潔シリーズは、『斜め屋敷の犯罪』『占星術殺人事件』、『ロシア幽霊軍艦事件』『異邦の騎士』と読んで、続く5作目だったので、そこまで御手洗潔フリークってことはないのですが、もう少し他の作品を読んでからの方が楽しめたのかもしれないな、と思いました。

読後感はさほど悪いわけではないのですが、満足感があるかどうかというと、最後まで読み切った自分を褒めてあげたい、というか、次は何を読もうというワクワク感が勝ってしまいました。

探偵『御手洗潔シリーズ』

探偵、御手洗潔(みたらいきよし)が主人公の島田荘司さんの推理小説のシリーズです。漫画やドラマ、映画化もされています。

漫画:『御手洗くんの冒険』

ドラマ:『天才探偵ミタライ〜難解事件ファイル「傘を折る女」〜』(脳科学者御手洗潔:玉木宏、ライター石岡和己:堂本光一)

映画:『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』(御手洗潔:玉木宏、編集者小川みゆき:広瀬アリス)

【シリーズ作品一覧】
・占星術殺人事件
・斜め屋敷の犯罪
・御手洗潔の挨拶(数字錠、疾走する死者、紫電改研究保存会、ギリシャの犬収録)
・異邦の騎士
・御手洗潔のダンス(山高帽のイカロス、ある騎士の物語、舞踏病、近況報告収録)
・暗闇坂の人喰いの木
・水晶のピラミッド
・眩暈
・アトポス
・龍臥亭事件(主役は石岡)
・御手洗潔のメロディ(IgE、SIVAD SELIM、ボストン幽霊絵画事件、さらば遠い輝き収録)
・Pの密室(鈴蘭事件、Pの密室収録)
・最後のディナー(里美上京、大根奇聞、最後のディナー収録)
・ハリウッド・サーティフィケイト(サブ・キャラクター、松崎レオナが主役の外伝的作品。御手洗潔は電話のみで登場)
・ロシア幽霊軍艦事件
・魔神の遊戯
・セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴(セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴・シアルヴィ館のクリスマス収録)
・上高地の切り裂きジャック(上高地の切り裂きジャック、山手の幽霊収録)
・ネジ式ザゼツキー
・龍臥亭幻想
・摩天楼の怪人
・溺れる人魚(溺れる人魚、人魚兵器、耳の光る児、海と毒薬収録)
・UFO大通り(UFO大通り、傘を折る女収録)
・最後の一球
・リベルタスの寓話(リベルタスの寓話、クロアチア人の手収録)
・進々堂世界一周 追憶のカシュガル(進々堂ブレンド1974、シェフィールドの奇跡、戻り橋と悲願花、追憶のカシュガル収録)
・星籠の海 The Clockwork Current
・屋上の道化たち
・御手洗潔の追憶(御手洗潔、その時代の幻、天使の名前、石岡先生の執筆メモから。、石岡氏への手紙、石岡先生、ロング・ロング・インタヴュー、シアルヴィ、ミタライ・カフェ収録)
・鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース

他にも、御手洗潔が偽名で登場する『切り裂きジャック・百年の孤独』や『星籠の海』のスピンオフ『香具山の白い衣』(『ダ・ヴィンチ』2016年6月号)など、スピンオフ的な作品も何作かあるようです。

私はまだ5作しか読んでいませんが、その中でのおすすめは迷わず『異邦の騎士』です。これまで読んだ推理小説の中でもおすすめの作品です。