ゴーストシップのあらすじ
1962年、優雅な船の旅を楽しむセレブたちを乗せたイタリアの豪華客船「アントニア・グラーザ号」で、客たちは豪華な食事を楽しみ、音楽に合わせてダンスを踊っていた。
その時突然、何者かが船のワイヤーを外し、一気に船上を水平に横切らせ、甲板にいた大勢の人々の体を切断。背が低かったため一人無事だった少女の悲鳴があたりに響き、船は消息をたつ。
そして場面は変わり、現代。海から船を引き揚げる仕事を行っていたマーフィーの会社の乗組員エップス、ドッジ、グリーア、サントス、マンダーは、仕事を終えた後バーで酒を飲んでいた。そこへ、飛行機で天候調査をしているという男、ジャック・フェリマンが来て、ベーリング海峡で漂流船を見つけたので、引き揚げて欲しいと仕事の依頼をしてきた。
その仕事を引き受ける条件として、ジャックは発見者として自身の取り分20%を求めたが、マーフィーは発見者の取り分が10%なら引き受ける、と条件を提示。そこでジャックはその要求を受け入れる代わりに、自分も船の引き揚げに同行する、ということで交渉が成立した。
漂流船を見つけるためにベーリング海峡へ向かったマーフィー達は、古びた大きい船を発見する。マーフィーはその船に驚く。船の名前は「アントニア・グラーザ号」で、マーフィーは、「速度で劣るイタリアが美を追及して造った豪華客船で、1962年5月21日にラブラドル沖で忽然と姿を消し、それ以来行方不明になっている船だ」と話した。
乗組員達は船の損傷具合を確認するため、アントニア・グラーザ号の中を探索した。消息をたったアントニア・グラーザ号から生きて戻った者は1人も見つかっていなかったのだが、不思議なことに船からは、救命ボートも救命具もなくなっていた。また、乗客や乗組員の死体も見つからなかった。
探索を続ける途中、腐っていた床を踏み下に落ちかけたマンダーを助けているときにエップスはいるはずのない女の子の姿を見かける。
さらに探索を続け操舵室に入ると、遭難当時の1976年にはあるはずのないデジタル時計が落ちていた。それはマーフィー達よりも先に船を見つけた人物がいたことを示していたが、マーフィーは夜が明けたら本格的な探索を始めることを決める。
その夜、マーフィーは、「アントニア・グラーザ号」のように無人のまま航海をし、何キロも離れた場所まで勝手に移動した「マリンセレスト号」という船の話をした。馬鹿にする乗組員たちに、こんな話は山ほどあり、海で奇妙なことがあっても不思議ではないと語った。エップスは一人で外にいたが、様子を心配してみにきたジャックに、マンダーを助けているときに謎の少女の姿を見たことを話した。
夜が明け、作業を開始すると「アントニア・グラーザ号」の底には大きな穴が開いており、修理しないと沈んでしまう可能性があることが判明した。「アントニア・グラーザ号」を引っ張るためには、タグボートのエンジンも直す必要があり、マーフィーはサントスにタグボートのエンジンの修理を、ドッジとマンダーには「アントニア・グラーザ号」の機械室の確認を指示し、他の者は「アントニア・グラーザ号」の船内の探索を始めた。
ドッジとマンダーが向かった機械室は水没していて、直すためには潜水具が必要だったのでエップスに通信機で連絡を入れるが、応答はなかった。一方グリーアは広間で奇妙な歌声を聞き、マーフィーは船長室で鏡に自分ではない人物が映り、慌てて船長室を出た。
その頃、エップスは船内のプールで銃弾のあとや玉の残骸を見つけ、さらに昨日見た少女の姿を見かけ、驚いた拍子にプールの床に頭を打ちつけていた。後から来たジャックに助けられ、プールに弾丸が落ちていたことや少女のを話した。
エップスが先へ進むために洗濯室から換気シャフトへつながる扉を開けると、中から大量の水と死体が流れ出てきた。後に戻ることもできず、エップスはジャックと扉の先へ進む。ジャックが憧れの車を見つけ足を止めるが、エップスは死体がそれほど古いものではないため、沿岸警備隊に連絡し船を離れようと急かす。
そのとき、部屋の隅で何かが動いていることに気づき、2人がそこにあった箱を恐る恐るあけると、ネズミに埋もれていた、たくさんの金塊を発見した。エップスは皆を連れ、金塊の場所まで戻り、話し合った結果、金塊だけを持ち出し船を置いていくことになり、金塊を持ち出す準備をした。
タグボートに残っていたサントスもエンジンの修理を終え、操縦室にいるグリーアにエンジンを動かすよう指示を出した。しかしその時、近くのプロパンガスの蓋が勝手に動き、中のガスが漏れ出てエンジンルームに充満していた。何も知らないグリーアがエンジンを稼働させ、タグボートは大爆発。グリーアは救助されるが、サントスは死んでしまう。
グリーアはいかだを作ってこんな幽霊船から脱出するべきだというが、エップスは船の穴をふさいで別の船が通りかかるのを待ち、救出してもらうほうがいいと言い、夜が明けたら船の穴を修理することになる。
「アントニア・グラーザ号」でエップスは船の記録を調べ、自分に見えている不思議な少女がケイティという名で、1人旅で「アントニア・グラーザ号」に乗っていたことを知る。客室を調べていると、扉が勝手に開き、中から首をつった状態で白骨化した少女の死体が出てきた。
その死体の首にはケイティの両親らしき人物の写真が入っているペンダントが掛けられいた。エップスが写真を見ているとケイティが現れ、彼に囚われているのだと話した。エップスは詳しく話を聞こうとしたが、ケイティは「逃げて」といい部屋から消えた。
一晩船で過ごすことになり苛立ちを隠せないグリーアは酒を飲んで、気分を紛らわしていると、荒れ果てた船内が突然きれいになっていき、赤いドレスを着た女性が現れる。グリーアは幻覚を見ているとは思うが、美しい女性に誘われるまま船内を付いて歩き、空いていたエレベーターの扉から下へ落ちてしまう。
その頃、船長室ではマーフィーもお酒を飲んでいた。すると突然「アントニア・グラーザ号」の元船長が現れ、1枚の写真をマーフィーに見せた。そして、船長は漂流していた「ローレライ号」という船を救助したこと、船には金塊があったことを話した。そして、1人だけ生存者がいることを示す写真を見せた。その写真を見てマーフィーは驚く。
エップスがケイティを追っているとき、様子のおかしいマーフィーの姿をみかける。マーフィーは、死んだはずのサントスの亡霊に付きまとわれていた。エップスの姿もサントスに見え、武器で襲ってしまう。そこにジャックが現れ、エップスは助けられ、とりあえずマーフィーを気絶させタンクに閉じ込めておくことにした。
ドッジとマンダーが船の修復作業を進めるあいだ、エップスは姿の見えないグーリアを探すが、グーリアの死体を見つけてしまう。落ち込むエップスの目の前に再びケイティが現れ、「アントニア・グラーザ号」で起こった悲劇をエップスに見せた。
それは、乗組員に化けた強盗犯が料理に殺虫剤を入れたり、銃を乱射したりと乗客を次々と殺している映像だった。そして船上を横断したワイヤーから免れたケイティも、客室で殺されていた。その後、強盗犯達は赤いドレスの女の指示で仲間同士で殺し合い、1人残った女もある一人の男に殺されていた。その男こそジャックだったのだ。
すべてを見たエップスは、マーフィーの元へ急いで向かうが、マーフィーは閉じ込められたタンクの中で1枚の写真を握ったまま水死していた。エップスはドッジの元に行き、マーフィーが死んだこと、船から逃げなければならないことを話すが、そこにジャックが現れたため、それ以上詳しく話すことができなかった。
そこでエップスは銃を渡し、とりあえずジャックから目を離すなと伝え、機械室にいるマンダーの様子を見に行く。しかしマンダーも、既に死んでいた。操舵室ではジャックのことを怪しく思ったドッジがジャックを銃で撃ち、エップスの元へ行き、ジャックは死んだと言った。しかしフリーマンの正体を知っているエップスはそうは思っていなかった。
エップスは、すべてを終わらせるため、船を爆破しようとしていたが、そこにドッジが現れ、自分たちも死んでしまう、金塊はどうするのか、と爆破することを止められる。エップスが爆破するための作業を進めながらもドッジの様子を訝しんでいると、ドッジは豹変し、フリーマンへと変わり姿を現した。
ジャックの正体は船一杯に魂を集めて地獄のサタンの元に送り届ける役目の魂の回収屋だった。船が沈むと魂が解放され逃げてしまいサタンの機嫌を損ねると言った。ジャックはエップスに命を助ける代わりに船の爆破を止めるよう取引を提案してきた。エップスは仲間を返すように言うが、手遅れと言われたので、その取引を拒否し、持っていた銃で爆破のスイッチを撃ち抜き船を沈めた。
船からは多くの魂が空へと向かい、消えていった。エップスは浮かんでいたトランクに捕まり漂流していた。そこに大きな客船が現れ、救助された。港で救急車に乗せられるとき、船に乗り込む人たちを見ていると、船に金塊を運ぶ乗組員と、ジャックの姿があった。
TVドラマでも活躍している俳優陣
「ゴーストシップ」 (Ghost Ship) は、ロバート・ゼメキスとジョエル・シルバーが共同で設立したホラー映画専門の製作会社、ダークキャッスル・エンタテインメントが制作の「TATARI」「13ゴースト」に続く第3弾のホラー映画です。1980年制作の「ゴースト/血のシャワー」(Death Ship)のリメイクとして企画されたものの、ポスターが似ているだけで作品としては別物になっています。監督は「13ゴースト」でも監督のスティーヴ・ベックです。
エップス役はアメリカの女優、ジュリアナ・マルグリーズです。ドラマ「ER緊急救命室」の看護婦長キャロル・ハサウェイ役で人気です。また、ドラマ「グッド・ワイフ」でも主役の女性弁護士を演じ、ゴールデングローブ賞のテレビ主演女優賞(ドラマ部門)を受賞しています。
マーフィー役はアイルランド出身の俳優ガブリエル・バーンです。映画「ユージュアル・サスペクツ」で元汚職刑事キートン役の俳優です。「仮面の男」のダルタニアンや「エンド・オブ・デイズ」のサタン役なども演じています。
ジャック・フェリマン役は、アメリカの俳優デズモンド・ハリントンです。ドラマ「ゴシップガール」や映画「ジャンヌ・ダルク」などにも出演しています。ドッジ役はアメリカの俳優ロン・エルダード、マンダー役はニュージーランド出身のカール・アーバン、グリーア役はドラマ「グレイズ・アナトミー 恋の解剖学」にも出演していたイザイア・ワシントンです。
赤いドレスの美女フランチェスカ役はイタリアの女優フランチェスカ・レットンディーニです。また謎の少女ケイティ役のオーストラリア出身の女優エミリー・ブラウニングはこの映画で注目を集めました。
映画の舞台である幽霊船「アントニア・グラーザ号」のモデルは1956年にマサチューセッツ沖で沈没した「アンドリア・ドリア号」です。
オープニングの衝撃がピーク
普段ホラー映画はあまり観ないのですが、ロバート・ゼメキスが監督の映画を探しているときに、関連映画として出てきたので、観てみました。タイトルやビジュアルからちょっとしたホラーかな、くらいに思って観始めたので、オープニングの船上のシーンは衝撃が強く、目を背けました。スプラッター映画が好きな方は、こんなシーンをもっと期待するのでしょうが、この映画ではつかみはOK、という程度のシーンです。
そして、インパクト大のオープニング以降は、赤いドレスの女の殺され方や食べていた缶詰がウジ虫などところどころ不気味で怖いところもありますが、ホラーというよりはサスペンスやアクションっぽくもあり、ホラーを観たい人にとってもサスペンスを観たい人にとっても、ちょっと中途半端で物足りない展開かなと思います。最初のインパクトが強いので期待値が高くなってしまう分、見終わったあと、多少の消化不良な感じがあります。
ケイティがエップスに船の中で何があったのかを不思議な力で見せる場面くらいまでは面白かったのですが、終盤のジャック・フェリマンがサタンで、魂を集めてボスに送るというあたりの話は、いまいちわかりにくく、もう少し映像などでわかりやすく説明できなかったかな、と思います。
オープニングのシーンは一度観るだけで私は充分ですが、全体的にはリピートしても細かなところがもっと拾えて気軽に楽しめるかなと思います。